ワザリング・ハイツ -annex-

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注目ノベルゲームまとめ

f:id:SengChang:20180130005636p:plain本記事はフィクションであり、実在の作品とはいっさい関係がありません。これは私がこれからプレイしたいと思っている作品を、まるでクリアしたかのように褒めちぎっただけの、すべて想像で書いたレビューになります。まったくなんの参考にもならない紹介でありながらも、各作品の扉を叩くきっかけとなればこれ幸い。くり返しますが、書かれていることは根拠のないでたらめであり――部分的に正しかったりもするのだろうが――決して信用しないでほしい、と釘を刺しておきたい。

 

●『My Merry May with be』

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ボードリヤールシミュラークルの主題はもとより、AIの自己同一性の問題を扱いながらも、それを鏡として人間の自己同一性の問題をより深い視点からなぞりなおしてゆく物語は、もはや圧巻としか言いようがない。私たちのまとう自己、そして他者のまとう自己はなにを根拠として“本当のもの”と捉えうるのか。互いが互いを理解できないからこそ「私」がある――自己と他者の差異や軋轢に着眼し、人間関係や自己存立が他者との“すれちがい”を前提に成立することを、改めて真摯に見つめなおした物語である。

 

●『WORLD END ECONOMiCA

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群青の空を越えて』で描かれた円経済圏構想とも響きあう、個人と集団とのあいだに生まれる軋轢や融和に根ざす問題を、あえて個人の眼から主観的に捉えた物語。ひとりひとりが「経済」という眼に見えないものを見つめて眼に見えないものとかけひきする狂気が描かれているとも言える――無論それは多数の個によって生みだされた実体のない期待値であり、それらを有機的に束ねた“抽象的な”思考を読みあうゲームがデイトレードである。経済が人間の本質を表象したなまものであることを語りだした物語は見事であるとしか言いようがない。

 

●『夏空カナタ

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親子や友人、男女関係を、個人と世界との関係を通じて比喩的に描出したゆずソフト初期の良作。『天色*アイルノーツ』や『サノバウィッチ』をプレイしたおりにも感じたが、日常でのかけあいも含め、物語を緻密につくりあげる構成力や演出のほどは卓越したものがあり、本作においてもそれは決して失われていない。世界の明と暗をそれぞれ誰かが否応なくひき受けることで、世の中の摂理が成りたちうるという厳しい現実を、切々と語った良作だと言っておきたい。

 

●『花散峪山人考』

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『神樹の館』を書いた希によるお伽噺。人間が自然を“拓く”ことで、見えないものを見えるようにしてしまう愚かさは、本作でも存分に追求されていた。自然破壊という行為が「奥」にある神秘を否定する態度そのものであり、人間自ら神を否定する行為に没したにもかかわらず、それに気づかずしたり顔で自然を否定しようとする矛盾は滑稽にさえ映る。希が一貫して描いてきた主題をさらにひとつ押し進めた重要な作品でもあり、晦渋な内容に顔をしかめず、ぜひともプレイしてほしい傑作である。

 

●『智代アフター

f:id:SengChang:20180130005646p:plain『CLANNAD』でも丁寧に描かれた、擬似家族と本当の家族という対偶関係が、本作でもひき続き中心主題として扱われる。『CLANNAD』が奇蹟を奇蹟としてではなく現実として描いたように、奇蹟の陰に潜む過酷な現実をあばきだす物語が、『智代アフター』の主幹を成すと言えるのではないか。その意味でも『CLANNAD』における陰の物語を陽の下にひきずり出したのが本作であると言えるかもしれない。信じることだけではなく、受けいれることを通してこそ、私たちの生が未来に開かれていることを教えてくれる大切な一作である。

 

●『雪影』

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『AIR』や『SNOW』『腐り姫』といった伝奇ものを思わせる、雪に降りこめられた村の「家」についての物語である。また現代においてタブーでしかない出来事が、村の伝承の意義によって見事に捉え返されてゆく稀有な物語でもあった。「大きな家」ならぬ「村」という共同体の存立を、肯定的な個の滅却をもとに実現するという、閉塞的な集落と信仰の闇が緻密に描きだされる。他の伝奇作品との響きあいも然ることながら、民族学的な観点から綿密に検討してゆきたい、再評価に値する良作であろう。

 

●『痕』

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96年にleafが放った伝奇ものの元祖と言われる秀作である。私が把握している限りでは、おそらくノベルゲームで最初に「家」の主題を扱った作品ではないかと思う。一族に宿る「鬼」という負の遺産が、個人の自己同一性を内側から喰破るさまは、『AIR』『腐り姫』で隆盛を見た主題のひとつでもあろう。本作以降に連なる伝記作品を押さえるうえでも非常に重要な位置づけとなる作品であることは疑う余地がない。

 

●『書淫、或いは失われた夢の物語。』

f:id:SengChang:20180130005642p:plain「ホテルの中で繰り広げられる、幾重の物語。それらは蜘蛛の糸の様に絡み合い、リンクし、補完しあっています」というHPの言葉通り、様々な物語の断片が響きあい、各々を定義してひとつの大きな像を描きだすさまは、かの名作『Serial experiments lain』を彷彿とさせる。過去と緊密に結びついた幻影に幽閉されたまま、現在を否定しつづける悲しい物語でもあり、現実を生きるには他者と関わる自分をつねに肯定しつづける意志が不可欠であることを教えてくれる。おそらく今後も長く語りつがれるであろう幻の傑作である。

 

●『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO

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一時代の歴史をつくったノベルゲームの金字塔。ゲームとしての特質と物語/物語りを結びつけ、ノベルゲームの芸術性を最高点にまで高めた頂点に君臨する作品だと言えよう。ADMSシステムによる世界間の移動や、茫漠とした断片をつなぎ合わせて物語を探る構成は、ドゥルーズ+ガタリの「リゾーム」のように四方に延々と広がるハイパーリンクの世界そのものであり、それこそが本作の中心主題を表象してもいるのであった。すなわち、過去から定義されるはずの現在が、本作では未来から遡行して次々と定義され、それが循環するひとつの歴史を形づくるという、反歴史的な物語なのである。あらゆる作品のひな型としての意義も大変大きい、改めて評価されるべき名作である。

 

●付記

f:id:SengChang:20180130005647p:plain内容について本当になにも言えていないのが読みなおしていて笑える。私が楽しいだけの誰も得をしない記事である。ここでとりあげた作品はどれもプレイしたいと強く望む作品であり、必ずや私の好奇心を満たしてくれるものと信じている。そんな期待も込めてこのたび遊び心満載の記事を書いた次第である。

読んでみたい物語があとを絶たず、現実的にすべてを消化するのは不可能であるがゆえ、かなり内容を調べたうえで着手することが多い。今回この記事を書くうえで多少調べながら作品をとりあげたわけだが、なかでも『マイメリ』『花散峪山人考』『雪影』あたりはかなり興味をひかれる内容であった。『マイメリ』は白目をむくほど退屈なパートも多いと聞き、高い評価でないのはそういったむらのせいだと思うが、機会を見つけてぜひ手にとりたい一作でもある。挙げた作品が旧作ばかりなのはお察しください。

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