ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』を読む(感想・レビュー)

マクロスシリーズがおもしろいのは、戦わないために戦う物語だからではないか。戦わないために歌という“文化”が用いられ、常識の異なる種族どうしが意思伝達をするための手段として生きてくる。私はロボットものになんの興味もないため、『マクロスF』と初代…

2018年上半期レビューまとめ

2018年上半期に本サイトで掲載したノベルゲームのレビューをまとめてふり返る記事。各作品の所感を短くまとめて紹介します。各節の終わりに記事へのリンクを貼ってあるので、詳しい作品レビューはそちらで閲覧することができます。それではいってみましょう…

シルヴィア・プラスを読む

プラスについて書きたいことが出てきたのでまとめておく。大学時代に卒業論文をプラスで書いた私だが、その頃はプラスの文学よりも先に英語と闘わねばならず、文献もろくにあされなかった苦い思い出がある。ゆえにプラスの海外文献については手持ちのものが…

『ONE』を読む(感想・レビュー)

その後のノベルゲームの範型をつくりだしたとも言われる『ONE』は、物語の展開も含めてきわめてパターン化されており、「物語」というよりも「ゲーム」という印象を強く受ける作品であった。おそらくこれがもともとのノベルゲームの形なのだろう。プレイなか…

日本語の代名詞を読む

よそで書いたエッセイなのだが、そろそろ時効だと思うので掲載してもよいかと。代名詞と文化現象の関係を一度まとめておきたいと思い、和辻の哲学から着想を得て、三浦つとむや大野晋の理論基盤を基軸としてまとめた言語論考。言語学の先生に査読をしてもら…

sakuraCafe『storia』を読む

2018年4月の末、春のM3でリリースされたsakuraCafeの2ndアルバム『storia』は、タイトルにあらわれている通り、とても文学的な色合いの強い作品である。アルバムを聴きながら、なぜこんなにも文学を感じるのだろうと考えていたら、ふと追いかけた詞の一節に…

『水葬銀貨のイストリア』: CG Commentary II

『イストリア』のCG Commentary第二弾。前記事の続き。『紙の上の魔法使い』も含め、ルクルのシナリオは次々と厚く塗り重ねてゆくような物語であるため、人物それぞれの経験に裏づけられた言葉の重みも魅力のひとつと言える。そういった言葉は、たとえ物語の…

『吉野葛・蘆刈』を読む

抱きあわせの小品として岩波文庫に収録された両作は、同じ「奥」の秘密に分入る昔語りの物語である。『神樹の館』や和辻哲郎の記事でとりあげたように、「奥」というのは日本文化において特異な意義をもち、つねに位相の高い場所として表現されてきた。奥の…

『水月』を読む 後夜(感想・レビュー)

『水月』がまさか依代の物語だとは知らなかったので、那波ルートを終えたときの充実感はひとしおであった。本作を名作たらしめているのは、作中に撒いた民俗の情報をかき集めるだけでなく、それらの根幹にあったひととひととの関わりの歴史に注視し、語り尽…

『水月』を読む 前夜(感想・レビュー)

洞窟に入ったときの「ひた、ひた」という擬音は、間違いなく折口信夫の『死者の書』の冒頭を意識したものであろう。その時点でこちらもそれなりに身構えるもので、続く洞窟や“籠もり”の表象、海洋信仰の提示といった仕掛けの数々を受けて、やっぱりな、とい…

『飛魂』を読む

多和田の文学について書いたのはもう五年近くも前になるが、そのときに指摘したのは、言葉のもつ不確かな性質、あいまいさについてであった。それはたとえば、「つくえ」という物体をあらわすとき、「机」と「desk」のどちらの方が“より「つくえ」らしいか”…

私のノベルゲーム10選

来年度からふたたび戦場に赴く自身への手向けとして、これまでプレイしたノベルゲームから甲乙つけがたい10作品を選び、褒めちぎっただけの記事。一人称的な思い出語りで所感をたれ流してゆきます。ゲーマーの常識である思い出補正満載。ここ数年のノベルゲ…

『アオイトリ』を読む(感想・レビュー)

発売前から『アマツツミ』と対になる作品として注目を集めた『アオイトリ』。その予告通り、日本と西洋の信仰、言葉(言霊)の主題といった明快なものだけでなく、particularity とuniversalityや部分と全体の主題までをも織込んだ意欲作であった。大局的に…

2017年の読書をふり返る

昨年は試験や仕事がずいぶん忙しくなったせいでめっきり量が減った感がある。しかし拾い読みはいつにも増して多く、実際に吸収できたものはかなり多かったように思う。残念ながら漫画にふれる時間はまったくなかった。昨年同様、ノベルゲームについては、下…

『水葬銀貨のイストリア』: CG Commentary I

名言アルバム『イストリア』のCG Commentary第一弾。生きるうえではあまり役に立たないが、誰もが心にとめてあること、そんな形容がふさわしい言葉が多かったような気がする。本作は正義についての深い洞察が見えるけれど、それについては前記事においてある…

『時間の闇の中で』を読む(感想・レビュー)

Ten Minutes Olderというオムニバス形式の連作映画は、様々な映画監督が10分の短篇映画を撮り、それらを短篇集とした束ねた製作企画であった。「イデアの森」と「メビウスの森」の二部から成り、ゴダールが制作した『時間の闇の中で(Dans le noir du temps …

『SNOW』を読む(感想・レビュー)

「『AIR』と同じ」と豪語するひとが、どれほどまともな眼でこの物語を読んだのか見てやろう、というよこしまな動機で手をつけた本作である。結論から言えば、構成面の類似だけでなく、大きな主題に関しても確かに『AIR』に通底する点が多かった。しかし私の…

『幽』を読む(感想・レビュー)

本屋で偶然見つけた作家である。こんな美しい文章を書く作家がいたのか。東大の研究者でもあり、非常におもしろい著作を多く生みだしているひとでもある。『折口信夫論』や『口唇論』といったすぐれた論考では、作家の卓越した言語感覚も然ることながら、非…

注目ノベルゲームまとめ

本記事はフィクションであり、実在の作品とはいっさい関係がありません。これは私がこれからプレイしたいと思っている作品を、まるでクリアしたかのように褒めちぎっただけの、すべて想像で書いたレビューになります。まったくなんの参考にもならない紹介で…

和辻哲郎を読む

日本人論というものを考えたときに和辻哲郎の功績を抜きにして語ることはできないであろう。現在少しずつ自分なりに構築しつつある“日本的特質”についての前提とも言える論拠を、諸方から様々な形で補強してくれる論理基盤が、和辻哲郎の『風土』では数多く…

『神樹の館』を読む 後夜(感想・レビュー)

『神樹の館』では、前夜でも述べたように、慣習的な日本の「家」について深い洞察があった。「うち」と「そと」の文化にふれ、家の全体性が個人の自己と同一視されるという現代においても問題とされる家社会の矛盾点を、物語として非常にうまくあらわしてい…

『ノラと皇女と野良猫ハート』を読む(感想・レビュー)

当意即妙なやりとりだけでなく、なにげない科白や独白も、全篇にわたって読ませる言葉で語られていた本作。ゆるいゲームでここまでテキストがすぐれている作品だと『LOVESICK PUPPIES』くらいのものなのではないか。このテキストを読むためだけでも続篇はや…

『罪ノ光ランデヴー』を読む 補遺

いつかじっくりやり直そうと思っていたルートである。過去に一度レビューを書いたが、時間が経ったいま改めて読み返してみると、自己の主題に関して興味深い点がいくつか見つかった。過去の自分と優人との関係を改めて捉えなおした風香が、現在の自分と優人…

2017年下半期レビューまとめ

2017年下半期に本サイトで掲載したノベルゲームのレビューをふり返る記事。各作品の所感を短くまとめて紹介します。プレイした時期が一年以上前のものも混ざっているため、今年鑑賞したものには、作品名の横に2017と表記しておきました。それではいってみま…

ノベルゲーム年代別一覧

これまで自分がプレイしてきたノベルゲームを記憶の限りまとめてみた自分向けの端書き。さすがにサイト内の記事を発売年ごとにカテゴリーで分類する元気はいまの自分にはないのでこれくらいで我慢しておく。やってみてわかったのは、約60本ほどしかプレイ本…

西田幾多郎を読む

木村敏がなぜ西田を重要視したのかが最近になってようやくわかってきた。西田は矛盾する要素を併せもつ主体として自己を捉え、また行為する働きそのものとして捉えてもいる。すなわち自己とは、他から働きかけられる存在でありながらも、他に働きかける存在…

『ナルキッソス0』を読む(感想・レビュー)

7F創設の歴史が語られる本作『ナルキッソス0』。よい意味で期待を裏切るような物語であったと言えるのではないか。当初は「創設の歴史」と聞いて予想される安易な展開を危惧していた私だったが、片岡さんの手にかかるとやはりそんなものは杞憂でしかなく、大…

『天使のいない12月』を読む(感想・レビュー)

まーた古いものをあさった結果『Crescendo』のような短篇を掘りあてた。エロゲーマーならみな一度はやっているであろう良作のひとつ。2003年の作品ながらCGがとてもよく、しかも各ルートで数時間でできるのは私にとってはほどよい。また物語のまとめ方も大変…

エミリー・ディキンソンを読む(Margaret Homans 註釈)

エミリー・ブロンテの研究で世話になったマーガレット・ホーマンズ(Margaret Homans)の文献がたまたま眼に入り、そういえばディキンソンについて書いたものが入っていたはずだと読んでみたところ、なかなかおもしろいことが書いてあった。いまの自分の考え…

『枯れない世界と終わる花』: CG Commentary

扱う主題は大きいが、とてもきれいにまとめてある短い物語。それぞれのキャラクターがものすごく立っていて、日々に疲れた私を心の底から癒やしてくれた作品。テーマ云々を講じるよりは、キャラクターの魅力や言葉を楽しく共有したい作品だった。今回はCG集…