アニメ(anime)
映像の意匠、カットやシークエンスのつくり方が芸術的すぎて、まるでヨーロッパの映画を観ているような気分になった――アニメ版『WHITE ALBUM』を観るのは二度目だったが、こんなにすぐれた作品だったか、と困惑したほどである。視聴に伴い、リメイク版『WHIT…
本当に細かいところまでつくり込んであることにため息がもれる。私的アニメランキングをつくったとしたら確実に五本の指に入る名作。人生で大切なことは全部ここに描かれている。なにかをつくりあげること、なにかと真剣に向きあうことを、 “生きること”とい…
すばらしい物語というのは世の中にいくらでもあるけれど、自分にとって特別な物語というのは実はとても少ない。ここ数年で読んだ物語のうち、本作は最も衝撃が大きかった物語だと言える。とてもよい読書体験であった。これから先、おりにふれて再読をくり返…
私はこの作品にアニメで親しんできたのだが、五年くらい前にようやく漫画版を手に入れ、先日はじめて読んでみたらやはり名作だったという話。いろいろな肩書きを方便として使いながら、元気にひきこもっていた時期も長い私にとって、この物語のリアルは見て…
マクロスシリーズがおもしろいのは、戦わないために戦う物語だからではないか。戦わないために歌という“文化”が用いられ、常識の異なる種族どうしが意思伝達をするための手段として生きてくる。私はロボットものになんの興味もないため、『マクロスF』と初代…
研究者としての性とも言うべきか、『AIR』を読み終えてからの数箇月間、熊野や自然信仰、口頭伝承、あるいは景観工学についての文献をいろいろとあたってきた。特に熊野の文献については、私がほしいと思っていた情報がほぼすべて手に入り、そのおかげで『AI…
『AIR』ではどのルートでも“夢”が大きな役割を果たし、人物たちの自己同一性にゆさぶりをかけ続ける。夢とはすなわち物語である――本作は物語についての物語、言うなれば、私たちが物語とどう付きあってゆくのかを問いかける物語でもあり、現実と物語の関係に…
予想をはるかに上回るほどの日本的な物語であった。こういうものを読むと、私たちは日本人として同じ固有の特質を共有しているのだなあと強く感じる。日本人が背負ってきた“家”という宿命や、村社会における排他的な差別思想、関係の病など、私たちが“臆”で…
2017年上半期に本サイトで掲載したアニメおよびノベルゲームのレビューをふり返る記事。各作品の所感を短くまとめて紹介します。プレイした時期が一年以上前のものも混ざっているため、今年鑑賞したものには、作品名の横に2017と表記しておきました(発売・…
深刻な社会問題をアニメ化するなど不謹慎極まりない、と言う大人には、それでは若者が主体的に社会問題を考えたくなるような策を別に提示してみろ、と言っておく。語る価値のない作品もかなり多い表現領域だが、それなりに意義をもった、議論されるべき物語…
昨年度に仕事で行った講義でアニメについてとりあげる機会があり、いくつかの窓を用意するような形で、連関しないトピックを並べて話をした。日本の文化的特徴を映したポストモダン的主題、として以下の話を総括することもできるが、私が恣意的に気になる話…
能登旅行記念に全話を通して見直してみたところ、やはりひと味ちがう面白さがあり、改めて感服した。仕事についての安い教訓を繰り言のように並べる作品がいまだ多いなかにあって、そういった押しつけがましい科白をいっさい挟むことなく、仕事の良し悪しを…
以前とりあげた『花物語』に続いて今回は『猫物語』(つばさタイガー)をとりあげてみたい。化物語シリーズのくどさは折紙つきであり、さらにはシリーズをある程度追わなければこの物語にはたどりつかないわけだけれど、改めて見てみると、なるほどこれは面…
2016年下半期に本サイトで掲載したアニメおよびノベルゲームのレビューをふり返る記事。各作品の所感を短くまとめて紹介していきます。漫画および文学作品ははずしているのでご注意。また、作品のなかには昨年より前に鑑賞したものもあるため、今年出逢った…
喪失感のお化け新海誠のすぐれた作品のひとつ。さすがにもう新海作品を見て切なくなる歳でもないけれど、これだけ恥ずかしいモチーフをよくぞここまで追求したものだと感心してしまうし、実際の表現そのものも堂に入った秀作ばかりで、国内外ともに評価は高…
すでにある大切なものを確認する物語。大きな変化はなく、出だしの状態からほとんどなにも変わらないのだけれど、ひとはなぜ過去をふり返らなければならないのか、その問いかけに対する答えがまっすぐに伝わってくる。いまの自分がなにをもっているのか、な…
つい先日に劇場版四篇がすべて終了。五年にわたるシリーズ全篇が完結した。 一番好きなアニメはなにかというべたべたな質問に私は、『たまゆら』だ、となんのためらいもなく答えられてしまう。この作品は私にとって非常に特別な物語であり、本記事はあくまで…
小説の領域でもアニメの領域でも「『氷菓』が好きだ」とあまり大きな声では言えない風潮が息苦しくて癪である。だがたとえば同時代の作家で米澤穂信のような物語を書けるひとはいないし、機知に富んだ文章も眼を見はるものがあり、彼に眼をつけた京アニはさ…
アンチが山のように湧く「化物語シリーズ」のうちこれだけは再評価を強く勧めたいという一作。沼地蝋花の抱える地獄は感情論では解決できず、だからこそ感情が起因で怪異を呼びよせた神原駿河をあえてぶつけたのだろうが、隙のない論理で悪を語る沼地のその…
2016年上半期に本サイトで掲載したアニメおよびノベルゲームのレビューをふり返る記事となります。短くまとめた所感からなんとなく各々の作品に興味をもってもらえればうれしいです。個人的なノートとしての役割のほうが大きいですが。 ●『CLANNAD』 導入、“…
いわゆるゼロ年代の想像力が生みだしたハートフルボッコ作品の代表格。三回くらい挫折してやっと完走した頃にはもう私は虫の息。でも見て・読んでよかった。身体のいろんなところが吹きとぶ作品のため軽々しく手を出すべからず。本記事ではそういった場面の…
物語をもてない少女が物語をもとうとする話。これは千尋だけでなくみやこについても言えることで、どうやら「a tale of memories」の一貫したモチーフのようである。残念ながら個人的に千尋というキャラクターにはなんの魅力も感じなかったが、設定はよかっ…
私は不治の病ものに弱いので「くるぞ、くるぞ・・・・・・ほらきたー」みたいな展開できちんと泣ける訓練された読者である。不治の病ものは大きな主題が明確に決まっているので、その単純明快な主題をどれほど奥深いものにできるかは作家の器量にかかっており、二…
ハルヒシリーズについていまさらなにも言うことがないというのは方便でもあり本音でもあり。ハルヒで入門すれば物語文法のAtoZはほぼほぼ学べる。しかも基礎文法の応用例まで完備した実に優秀な教科書であるから、ハルヒからアニメ・ラノベに没入したという…
アニメ放送時に作者が実況という名の自作解説をやる(しかもご丁寧にすべての場面にコメントをつける)という前代未聞の自演があって少しひいたのもいまはいい思い出。エイズの話題が盛りこまれた時点で作者の“繫がりたい”という強すぎる意識は感じたけれど…
第二夜において、並立する世界が互いのifでありつづけると書いた。どちらが本物というわけでもない、オリジナルのないコピーである。ここにもやはりボードリヤールのシミュラークルの概念を導入することができる。ドゥルーズの仮面の比喩をひくまでもなく、…
As we saw before, in this work it is important to consider time axes as the ones which enable us to read “a repetitive story” profoundly. There is lots of thought-provoking works triggering the desire to analyse, which is devoted to higher…
本作において時間軸が重要であることは先に述べた通りだが、この時間軸というのは「ループもの」を読解する際の一般的な手綱である。考察と銘打った“推理”を誘う作品は示唆に富むものが多いし、そういった推理は作品の価値を高めるのに必要なものでもある。…
“Theory of Everything”, entitled in episode 14 in the first-term, is string theory which has been featured as an universal theory in physics. In fact there appear in the story a book on wave function and mention of the many-worlds interpre…
1期14話に付された表題の“Theory of Everything”(万物の理論)とは、物理学が万有の理論として注目するひも理論を指す言葉である。実際に物語のなかで波動関数の書物が出てきたり多世界解釈についての言及があったりするのは時流を感じさせるが、ここでその…