ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

ノベルゲーム(game)

『腐り姫』を読む 補遺(感想・レビュー)

『腐り姫』二周目プレイの記念として、なにか残しておけないかと書いてみた記事。これだけの名作にたった二本のレビューはあまりにもさびしいと思い、ここ数年で気になっている日本の神と“矛盾的同一”をテーマにとり、今一度『腐り姫』をあらためた。しかし…

2018年上半期レビューまとめ

2018年上半期に本サイトで掲載したノベルゲームのレビューをまとめてふり返る記事。各作品の所感を短くまとめて紹介します。各節の終わりに記事へのリンクを貼ってあるので、詳しい作品レビューはそちらで閲覧することができます。それではいってみましょう…

『ONE』を読む(感想・レビュー)

その後のノベルゲームの範型をつくりだしたとも言われる『ONE』は、物語の展開も含めてきわめてパターン化されており、「物語」というよりも「ゲーム」という印象を強く受ける作品であった。おそらくこれがもともとのノベルゲームの形なのだろう。プレイなか…

『水葬銀貨のイストリア』: CG Commentary II

『イストリア』のCG Commentary第二弾。前記事の続き。『紙の上の魔法使い』も含め、ルクルのシナリオは次々と厚く塗り重ねてゆくような物語であるため、人物それぞれの経験に裏づけられた言葉の重みも魅力のひとつと言える。そういった言葉は、たとえ物語の…

『水月』を読む 後夜(感想・レビュー)

『水月』がまさか依代の物語だとは知らなかったので、那波ルートを終えたときの充実感はひとしおであった。本作を名作たらしめているのは、作中に撒いた民俗の情報をかき集めるだけでなく、それらの根幹にあったひととひととの関わりの歴史に注視し、語り尽…

『水月』を読む 前夜(感想・レビュー)

洞窟に入ったときの「ひた、ひた」という擬音は、間違いなく折口信夫の『死者の書』の冒頭を意識したものであろう。その時点でこちらもそれなりに身構えるもので、続く洞窟や“籠もり”の表象、海洋信仰の提示といった仕掛けの数々を受けて、やっぱりな、とい…

私のノベルゲーム10選

来年度からふたたび戦場に赴く自身への手向けとして、これまでプレイしたノベルゲームから甲乙つけがたい10作品を選び、褒めちぎっただけの記事。一人称的な思い出語りで所感をたれ流してゆきます。ゲーマーの常識である思い出補正満載。ここ数年のノベルゲ…

『アオイトリ』を読む(感想・レビュー)

発売前から『アマツツミ』と対になる作品として注目を集めた『アオイトリ』。その予告通り、日本と西洋の信仰、言葉(言霊)の主題といった明快なものだけでなく、particularity とuniversalityや部分と全体の主題までをも織込んだ意欲作であった。大局的に…

『水葬銀貨のイストリア』: CG Commentary I

名言アルバム『イストリア』のCG Commentary第一弾。生きるうえではあまり役に立たないが、誰もが心にとめてあること、そんな形容がふさわしい言葉が多かったような気がする。本作は正義についての深い洞察が見えるけれど、それについては前記事においてある…

『SNOW』を読む(感想・レビュー)

「『AIR』と同じ」と豪語するひとが、どれほどまともな眼でこの物語を読んだのか見てやろう、というよこしまな動機で手をつけた本作である。結論から言えば、構成面の類似だけでなく、大きな主題に関しても確かに『AIR』に通底する点が多かった。しかし私の…

注目ノベルゲームまとめ

本記事はフィクションであり、実在の作品とはいっさい関係がありません。これは私がこれからプレイしたいと思っている作品を、まるでクリアしたかのように褒めちぎっただけの、すべて想像で書いたレビューになります。まったくなんの参考にもならない紹介で…

『神樹の館』を読む 後夜(感想・レビュー)

『神樹の館』では、前夜でも述べたように、慣習的な日本の「家」について深い洞察があった。「うち」と「そと」の文化にふれ、家の全体性が個人の自己と同一視されるという現代においても問題とされる家社会の矛盾点を、物語として非常にうまくあらわしてい…

『ノラと皇女と野良猫ハート』を読む(感想・レビュー)

当意即妙なやりとりだけでなく、なにげない科白や独白も、全篇にわたって読ませる言葉で語られていた本作。ゆるいゲームでここまでテキストがすぐれている作品だと『LOVESICK PUPPIES』くらいのものなのではないか。このテキストを読むためだけでも続篇はや…

『罪ノ光ランデヴー』を読む 補遺

いつかじっくりやり直そうと思っていたルートである。過去に一度レビューを書いたが、時間が経ったいま改めて読み返してみると、自己の主題に関して興味深い点がいくつか見つかった。過去の自分と優人との関係を改めて捉えなおした風香が、現在の自分と優人…

2017年下半期レビューまとめ

2017年下半期に本サイトで掲載したノベルゲームのレビューをふり返る記事。各作品の所感を短くまとめて紹介します。プレイした時期が一年以上前のものも混ざっているため、今年鑑賞したものには、作品名の横に2017と表記しておきました。それではいってみま…

ノベルゲーム年代別一覧

これまで自分がプレイしてきたノベルゲームを記憶の限りまとめてみた自分向けの端書き。さすがにサイト内の記事を発売年ごとにカテゴリーで分類する元気はいまの自分にはないのでこれくらいで我慢しておく。やってみてわかったのは、約60本ほどしかプレイ本…

『ナルキッソス0』を読む(感想・レビュー)

7F創設の歴史が語られる本作『ナルキッソス0』。よい意味で期待を裏切るような物語であったと言えるのではないか。当初は「創設の歴史」と聞いて予想される安易な展開を危惧していた私だったが、片岡さんの手にかかるとやはりそんなものは杞憂でしかなく、大…

『天使のいない12月』を読む(感想・レビュー)

まーた古いものをあさった結果『Crescendo』のような短篇を掘りあてた。エロゲーマーならみな一度はやっているであろう良作のひとつ。2003年の作品ながらCGがとてもよく、しかも各ルートで数時間でできるのは私にとってはほどよい。また物語のまとめ方も大変…

『枯れない世界と終わる花』: CG Commentary

扱う主題は大きいが、とてもきれいにまとめてある短い物語。それぞれのキャラクターがものすごく立っていて、日々に疲れた私を心の底から癒やしてくれた作品。テーマ云々を講じるよりは、キャラクターの魅力や言葉を楽しく共有したい作品だった。今回はCG集…

『アマツツミ』: CG Commentary

CG鑑賞記事第二弾。今回は名言の宝庫『アマツツミ』より抜粋。言葉についての物語だけあって言葉の力強さが随所で光る作品である。使いたかったCGがたくさん残っているので、ここで一挙に紹介していきたいと思う。 ●「他人はもう1人の自分だよ」 自分が複数…

『AIR』を読む 補遺(感想・レビュー)

研究者としての性とも言うべきか、『AIR』を読み終えてからの数箇月間、熊野や自然信仰、口頭伝承、あるいは景観工学についての文献をいろいろとあたってきた。特に熊野の文献については、私がほしいと思っていた情報がほぼすべて手に入り、そのおかげで『AI…

『ファタモルガーナの館』を読む 後夜(感想・レビュー)

ファタモルガーナ(Fata Morgana)はイタリア語で「蜃気楼」や「幻影」という意味らしく、また「ファタ」には “妖精”といった意味があるのだという。この形容詞がモルガーナにつけられている皮肉は、物語を読んだあとでは、ただの気の利いた皮肉として見過ご…

『ファタモルガーナの館』を読む 前夜(感想・レビュー)

しかしよくぞこんな話を思いついたものである。非常に文学性の高い作品ながらも、ヴィジュアル・サウンド・ノベルの特性を余すことなく活用した、魂の傑作と言わざるをえない。さすがに参った。これはすごい。ポップ・カルチャーの表現媒体をここまでハイ・…

『アマツツミ』を読む 響子ルート(感想・レビュー)

ふと思いたったのが、響子ルートとシュペルヴィエル「海に住む少女」との物語の符号である。この観点からなら響子と鈴夏の物語に大事な価値を見出せるかもしれないと思いふたたびとりあげることにした。もともと鈴夏ルートはほたるルートの前座として、分裂…

 『らくえん ~あいかわらずなぼく。の場合~』(感想・レビュー)

誰もが認めるエロゲーマーのバイブル『らくえん』をプレイ。なんだこのゲーム最高かよ。やろうかどうか遅疑逡巡しているひとがいるならぜひいますぐにでも手にとるべき作品である。とにかく面白い。そのひと言。思考を働かせて愉しむゲームではないため、今…

低・中評価のノベルゲームを読む

世間の評価はたいして高くないものの、個人的に思入れのあるノベルゲームをまとめて紹介。世の中の平均的評価と自分の評価が一致しないのはどの分野でも定番である。埋もれた名作とまではさすがに言うつもりはないけれど、気が向いたら手にとってみてほしい…

『腐り姫』を読む 後夜(感想・レビュー)

前夜の記事では、本作の大きな特徴である閉塞した循環に光を当てて物語を検めた。当然のごとく思い浮かぶひとつの大きな疑問は、ここまでおそろしく閉じた二人関係を突きつめる意義がいったいどこにあるのか、という実に素朴な疑問である。すなわち、同じ営…

『腐り姫』を読む 前夜(感想・レビュー)

これは“内側に閉じたセカイ系”とでも言うべきなのか。読書というのは往々にして同じテーマを呼びこむもので、この前にプレイしていた『AIR』や『神樹の館』と問題意識を分かち、家の因縁を受けついで延々とくり返しつづける恐ろしい物語である。五樹と樹里だ…

『AIR』を読む 後夜(感想・レビュー)

『AIR』ではどのルートでも“夢”が大きな役割を果たし、人物たちの自己同一性にゆさぶりをかけ続ける。夢とはすなわち物語である――本作は物語についての物語、言うなれば、私たちが物語とどう付きあってゆくのかを問いかける物語でもあり、現実と物語の関係に…

『AIR』を読む 前夜(感想・レビュー)

予想をはるかに上回るほどの日本的な物語であった。こういうものを読むと、私たちは日本人として同じ固有の特質を共有しているのだなあと強く感じる。日本人が背負ってきた“家”という宿命や、村社会における排他的な差別思想、関係の病など、私たちが“臆”で…