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ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

『生命のスペア』を読む(感想・レビュー)

“I was born for you”という副題については、恵璃の妹璃亜が姉のスペアであるということ、そして竜次が兄のスペアを強要された過去をもつこと、竜次と恵璃の死とひきかえに璃亜が第二の生を授かったことなど、いろいろと含みがあるようである。臓器移植の一…

『Crescendo』を読む(感想・レビュー)

もはや普通の小説である。アニメその他にある軽快で現実離れした会話のかけあいは一切ない。いまこういう筆致で書いているのはInnocent Greyのライターぐらいのものではないだろうか・・・・・・などと感慨にふけった。 血の繋がりがないとわかった途端に姉を犯す…

『SWANSONG』を読む 後夜(感想・レビュー)

柚香の言う、「ここでは何か望まないと、最低でも望むフリをしないと、まともに生きていけない」という言葉は、普通の社会生活にもそのまま当てはまるものであり、『CARNIVAL』が暴きだした過酷な真実でもあった。学と理沙の生き方は、ニーチェやキルケゴー…

『SWANSONG』を読む 前夜(感想・レビュー)

なんだ、ただの文学か。現在の出版事情ではこうした物語を表に出すのは難しく、まさにアダルト・ノベルゲームだからこそ、実現できた作品といってよいのではないだろうか。それにしてもすさまじい力をもった物語であった。 オウムの事件は“物語”という天災が…

『見上げてごらん、夜空の星を』を読む(感想・レビュー)

ふたご座流星群に合わせてプレイしはじめた本作。久々に穏やかな良作に浸った気がする。どう読むとかそういう問題じゃない普通の物語なので、あらすじなど追いかけながら、いつもとはちがった心持ちで紹介していきたい。沙夜isゴッド。 ●空白の三年間:沙夜√…

『最終試験くじら』を読む(感想・レビュー)

あまりにもひどいテキストなのになぜか擁護したくなる作品のひとつ。シナリオの大半は語るに値せず、十代の素人でもここまでひどいテキストは書かないだろうと言いたくなるレベルであり、私自身まともに読んだテキストよりスキップしながら斜め読みした量の…

2016年下半期レビューまとめ

2016年下半期に本サイトで掲載したアニメおよびノベルゲームのレビューをふり返る記事。各作品の所感を短くまとめて紹介していきます。漫画および文学作品ははずしているのでご注意。また、作品のなかには昨年より前に鑑賞したものもあるため、今年出逢った…

『LOVESICK PUPPIES』を読む(感想・レビュー)

良作のなかの傑作。私のなかでは名作。テキストが抜群によく、こんなにしっかりとしたものを書けるライターはそう多くはいない。盛りあがりに欠けると言われるものの、文学が専門の私にしてみれば「盛りあがりい?はあ?」という感じでまったく気にならず。…

『運命予報をお知らせします』を読む(感想・レビュー)

美少女ゲームのお約束を次々と脱構築してゆく教科書的な作品。ある意味で批評の集積とも言える批評的作品である本作はメタ・フィクションというよりメタ・クリティークとでも言うべきか。これはこれで面白い。 それから林檎と景色の造形がすごい。特に林檎は…

『最果てのイマ』を読む 試論(感想・レビュー)

攻略サイトをつくったひともすごいけれど、場面をすべて整列しようとがんばるひとたちがもっとすごい。この記事は彼らの努力を否定するような内容ではあるが、むだな努力と言いたいわけではなく、むしろそういうひとたちがいたからこそこの発想に至ったとい…

『紙の上の魔法使い』を読む 後夜(感想・レビュー)

妃ルートの満足感は筆舌に尽くしがたい。鬱にならない作品を物語としてあまり信用できないと思ってしまう私は、めくるめく訪れる鬱エンドの連続に終始笑顔であった。まあそれはさておき。 『紙まほ』はとにかく情報量が多い。それゆえ情報の氾濫とそれによる…

『紙の上の魔法使い』を読む 前夜(感想・レビュー)

疲れた、というのが正直な感想。まるで19世紀イギリス小説を読んだあとのように、なにか書くって言ったってどこから手つけりゃいいのよ・・・・・・と途方に暮れてしまった本作。挿話の量だけでなく問題提起の量もひとしお。必ずしも個々の主題が十分表現されてい…

『夏空のペルセウス』を読む(感想・レビュー)

一年ぶりにやり直してみると、恋ルートもそれほど悪くないな、という印象。自分たちの置かれた状況を透香との対話を通じて静かに丁寧に述懐するくだりなんかはとてもよい。この恋との物語をより現実的に語りなおした物語が『罪ノ光ランデヴー』の風香ルート…

『遥かに仰ぎ、麗しの』を読む(感想・レビュー)

相変わらず過去の名作ばかりを次々とプレイしており、もともと古典文学の研究者だった自分の性を感じるところでもあるのだけれど、やはり時を経てもなお面白いとされる作品にそう悪いものはないのである。とにかく丁寧だったという印象の『かにしの』。穏や…

『パルフェ』を読む 後夜(感想・レビュー)

前夜の記事ではカトレアを中心に、かすり、明日香と順に触れさせていただいた。 sengchang.hatenadiary.com みんな大好き里伽子ルートは、なんというか、身につまされることが多すぎて思わず考えこんでしまいそうだった。家族と恋人(他人)のどちらを優先す…

『パルフェ』を読む 前夜(感想・レビュー)

いいものにはいいと言われるだけの理由があると思っている。やらずに積んでおいた『パルフェ』は私にとっての約束された名作であり、心の処方箋というこの切り札の使うべき時機を長らく見計らい、このたびようやく服用させていただきました。媚びない、詫び…

『Narcissu -SIDE 2nd』を読む(感想・レビュー)

一作目(小説版)についての記事はこちら。 sengchang.hatenadiary.com 『半分の月がのぼる空』とはまたちがった角度から死を通じて生を捉えようとした不治の病もの。死について考えることは生について考えることだと言ったのは西田幾多郎だったか木村敏だっ…

『向日葵の教会と長い夏休み』 夏咲詠ルートを読む(感想・レビュー)

SCA-自さんとの相性はわりとよいほうだが瀬戸口ほどではない。『素晴らしき日々』で人物が物語装置化していたり、物語の手段であるはずの伏線回収をほとんど物語の目的としてしまうあたり、あまり信用はしていない。だけれど本作の詠ルートのようなものはこ…

『罪ノ光ランデヴー』真澄あいルートを読む(感想・レビュー)

小川未明の『赤い蝋燭と人魚』の焼きなおし、ではないけれど、実は本作では、文学史的に見ると重要なある切り口から小川未明の作品を批判的に敷衍していることがわかる。本家については過去記事を参照。 sengchang.hatenadiary.com また、たまたま読んでいた…

『明日の君と逢うために』を読む(感想・レビュー)

紫作品のうちこれだけはやっとけとおまえらが言うからやってみたよ。OP安定のパープルながら意味不明の裸バーゲンセールで笑った。タイトル画面放置でキャラクターが自己紹介する仕掛けとかすごくいいと思うし、やっているうちにほかの紫作品にも手を出した…

『なついろレシピ』八重原柚ルートを読む(感想・レビュー)

音楽のリズムに様々な料理の音を駆使して気持ちのよいBGMをつくりだした功績の大きさよ。シナリオやCGだけでなくサウンドトラックもエロゲの楽しみのひとつであることはみなさんご承知だと思うが、本作はそんななかでもおすすめの一作。重要な場面でのBGMも…

2016年上半期レビューまとめ(アニメ・ノベルゲーム)

2016年上半期に本サイトで掲載したアニメおよびノベルゲームのレビューをふり返る記事となります。短くまとめた所感からなんとなく各々の作品に興味をもってもらえればうれしいです。個人的なノートとしての役割のほうが大きいですが。 ●『CLANNAD』 導入、“…

『CROSS†CHANNEL』を読む(感想・レビュー)

本作については噂や評判がひとり歩きして、本当にそこまでの傑作なのか?と疑いたくなるひとも多数おられることでしょう。名言ラッシュに感銘を受けて名作と言うひともいれば、狂気の現出にゆさぶられたひともいるし、なかでも田中ロミオが仕掛けたシナリオ…

『ef – a tale of memories』を読む/前夜(感想・レビュー)

物語をもてない少女が物語をもとうとする話。これは千尋だけでなくみやこについても言えることで、どうやら「a tale of memories」の一貫したモチーフのようである。残念ながら個人的に千尋というキャラクターにはなんの魅力も感じなかったが、設定はよかっ…

『罪ノ光ランデヴー』椿風香ルートを読む(感想・レビュー)

minoriレギュラーのゆいにゃん無双、椿ルートを講評。山を越えたあとにもうひと山、そしてもうひと山、となかなか楽しませてもらえました。あの『夏空のペルセウス』恋ルートをもう少し掘り下げたような印象。本作ではきちんと大人が登場することと、周囲の…

『CARNIVAL』を読む(感想・レビュー)

※冗長な前置きを飛ばしたいひとはふたつめの●印までスクロールどうぞ。 精神病が科学的にリアリズムで記述されはじめたのは19世紀頃と思われ、イギリスでは道徳的狂気(moral insanity)と狂気(insanity)が区別されるなど、精神病患者に対する健常者の見方…

『何処へ行くの、あの日』を読む(感想・レビュー)

呉さんの本気『何処あの』はなかなかの意欲作で、語りのパターン化や島君の明かされない過去や木之下君の想像を絶する気持ち悪さなどは眼につくものの、おおむねすばらしい出来である。殊に“噓の世界”を消してゆく虫喰い現象の仕掛けなんてため息が出るほど…

『ぼくのたいせつなもの』を読む(感想・レビュー)

知るひとぞ知る隠れた名作であり、かの「エロゲー批評空間」では、データ数は少ないながらも、諸手を挙げて名作とされる伝説のゲームである。こういう作品に出逢うたび、エロゲやめるわけにはいかないな、と思うのは私だけじゃないはず。2004年の作品ながら…

『ソレヨリノ前奏詩』都築はるかを読む(感想・レビュー)

永遠ルートもわりと面白かったので満足しているものの、それ以前に大サビへ入る前のはるかルートがよくできすぎていてそこで満足してしまった、というのが本音。明るく気さくな人気者なのに孤独を感じる彼女を見て、facebookに友達が200人や300人いるのにふ…

『12の月のイヴ』を読む(感想・レビュー)

『ソレヨリノ前奏詩』はるかルートを講評しようかと思ったけれどなんとなくこちらを先にとりあげることにした。minori作品パターン化の原点はここ。別にいいと思う。どんどんやれ。 むしろ同じ鋳型にちがうもの流しこんで次々と新しいものを作ってみてほしい…

『クラナド』を読む 第三夜

第二夜において、並立する世界が互いのifでありつづけると書いた。どちらが本物というわけでもない、オリジナルのないコピーである。ここにもやはりボードリヤールのシミュラークルの概念を導入することができる。ドゥルーズの仮面の比喩をひくまでもなく、…

Reading CLANNAD: Second Night

As we saw before, in this work it is important to consider time axes enable us to read “a repetitive story” profoundly. There is lots of thought-provoking works triggering the desire to analyse, which is devoted to higher evaluation than b…

『クラナド』を読む 第二夜

本作において時間軸が重要であることは先に述べた通りだが、この時間軸というのは「ループもの」を読解する際の一般的な手綱である。考察と銘打った“推理”を誘う作品は示唆に富むものが多いし、そういった推理は作品の価値を高めるのに必要なものでもある。…

Reading CLANNAD: First Night

“Theory of Everything”, entitled in episode 14 in the first-term, is string theory which has been featured as an universal theory in physics. In fact there appear in the story a book on wave function and mention of the many-worlds interpre…

『クラナド』を読む 第一夜

1期14話に付された表題の“Theory of Everything”(万物の理論)とは、物理学が万有の理論として注目するひも理論を指す言葉である。実際に物語のなかで波動関数の書物が出てきたり多世界解釈についての言及があったりするのは時流を感じさせるが、ここでその…

Reading CLANNAD: Eve

CLANNAD was released as a PC game in 2004, which was to be made into animation in 2007-08 (first term) and in 2008-09 (second term). It is one of the readings to scrutinise how much narrative grammar, taken an attempt in all kinds of gal g…

『クラナド』を読む 前夜

PCゲームとして『クラナド』が発売されたのは2004年、そののちに映像化されたアニメ版の第1期・2期はそれぞれ2007年~08年、2008年~2009年に放送された。美少女ゲーム・アニメ(さらにはその他の物語メディア)においてそれまで試みられてきたあらゆる物語…

Tomo Kataoka / Narcissu

Narcissu is entitled without the final character ‘s’ of “narcissus”, which means a hope to reduce a number of suicides.This book is worth even if you read only three pages, I think. Even though diction and grammar are sometimes wrong, ther…

片岡とも『ナルキッソス』

原題のNarcissuは“Narcissus”から最後の“s”を落としたものであり、これは自殺(“Suicide” の“s”)を失くしたいという製作者の想いからきているのだという。たとえ最初の三ページだけでも、この本は読む価値があると私は思う。言葉遣いがおかしくても、文法が…