ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

感想・考察(レビュー)

『アマツツミ』を読む 響子ルート(感想・レビュー)

ふと思いたったのが、響子ルートとシュペルヴィエル「海に住む少女」との物語の符号である。この観点からなら響子と鈴夏の物語に大事な価値を見出せるかもしれないと思いふたたびとりあげることにした。もともと鈴夏ルートはほたるルートの前座として、分裂…

 『らくえん ~あいかわらずなぼく。の場合~』(感想・レビュー)

誰もが認めるエロゲーマーのバイブル『らくえん』をプレイ。なんだこのゲーム最高かよ。やろうかどうか遅疑逡巡しているひとがいるならぜひいますぐにでも手にとるべき作品である。とにかく面白い。そのひと言。思考を働かせて愉しむゲームではないため、今…

低・中評価のノベルゲームを読む

世間の評価はたいして高くないものの、個人的に思入れのあるノベルゲームをまとめて紹介。世の中の平均的評価と自分の評価が一致しないのはどの分野でも定番である。埋もれた名作とまではさすがに言うつもりはないけれど、気が向いたら手にとってみてほしい…

『腐り姫』を読む 後夜(感想・レビュー)

前夜の記事では、本作の大きな特徴である閉塞した循環に光を当てて物語を検めた。当然のごとく思い浮かぶひとつの大きな疑問は、ここまでおそろしく閉じた二人関係を突きつめる意義がいったいどこにあるのか、という実に素朴な疑問である。すなわち、同じ営…

『腐り姫』を読む 前夜(感想・レビュー)

これは“内側に閉じたセカイ系”とでも言うべきなのか。読書というのは往々にして同じテーマを呼びこむもので、この前にプレイしていた『AIR』や『神樹の館』と問題意識を分かち、家の因縁を受けついで延々とくり返しつづける恐ろしい物語である。五樹と樹里だ…

『AIR』を読む 後夜(感想・レビュー)

『AIR』ではどのルートでも“夢”が大きな役割を果たし、人物たちの自己同一性にゆさぶりをかけ続ける。夢とはすなわち物語である――本作は物語についての物語、言うなれば、私たちが物語とどう付きあってゆくのかを問いかける物語でもあり、現実と物語の関係に…

『AIR』を読む 前夜(感想・レビュー)

予想をはるかに上回るほどの日本的な物語であった。こういうものを読むと、私たちは日本人として同じ固有の特質を共有しているのだなあと強く感じる。日本人が背負ってきた“家”という宿命や、村社会における排他的な差別思想、関係の病など、私たちが“臆”で…

『少女アクティビティ』を読む(感想・レビュー)

アイキャッチがロシアンフォルマリズムのエル・リシツキーのデザインに似ている。まあそれはともかくとして。 『少女マイノリティ』がとてもよかったのになにも書けず悔しかったので『少女アクティビティ』も併せてプレイした。『マイノリティ』に比べて『ア…

『ナルキッソス -スミレ-』を読む(感想・レビュー)

『ナルキッソス -スミレ-』に見られる人物再登場――ある作品の作中人物を他作品に登場させる手法――は、バルザックやディケンズの作品にもある昔から好まれた試みのひとつ。20世紀以降に理論批評が台頭し、metaphysicalという形容詞がクリシェのように使われる…

『すみれ』を読む(感想・レビュー)

・・・・・・ん?浅いぞ?というのが読了後の率直な感想。それはおそらく私がナルキッソスシリーズの深みをのぞいたことのある人間だからなのでしょう。しかしながらいろいろと面白い試みもあったのでそのことについてここでは少しふれておこうと思う。決して面白…

『紙の上の魔法使い』を読む 続(感想・レビュー)

「明らかに現実的な生きた完全なもの」として、すなわち自己の「健全さと妥当性」を疑うことのない人物。こうした人間を描かないカフカの作品を称してR・D・レインは次のように述べる。「事実、このような確信なしに生きるとはどういうことなのかを伝えよう…

2017年上半期レビューまとめ

2017年上半期に本サイトで掲載したアニメおよびノベルゲームのレビューをふり返る記事。各作品の所感を短くまとめて紹介します。プレイした時期が一年以上前のものも混ざっているため、今年鑑賞したものには、作品名の横に2017と表記しておきました(発売・…

『神樹の館』を読む(感想・レビュー)

さすがにここまでは予想していなかった、というほどの仕上がり。これはすごい。日本古来の“家”の慣習と歴史=物語に対する深い洞察だけでなく、異類婚姻譚、日本の神、明治維新から大正にかけての和洋折衷文化、言葉遊びといった日本の伝統を余すことなく盛…

『アマツツミ』を読む(感想・レビュー)

日本のお家芸、異類婚姻譚の類型・亜種とも言える物語。『明日の君と逢うために』も然り、Purpleは“踏みこえる”という主題が好きなのだろうか。ライターはちがうようだが、踏みこえていった明日香と、踏みこえてきた誠や愛には、共有される問題がありなかな…

V・v・ヴァイツゼッカー『ゲシュタルトクライス』を読む

ヴァイツゼッカーを日本に紹介した木村敏の功績は非常に大きい。神経科医であったヴァイツゼッカーは、フロイトの精神分析学を出発点として独自の思索を展開し、主体についての重要な考えを提示した。本書では生物学的観点に重きを置きながらも、精神病理学…

 『水葬銀貨のイストリア』を読む 後夜(感想・レビュー)

いつみや灯、あるいはC・Aとしての英士も然り、別の人間としてもう一度親しい人間の日常に戻ってくるというのは『紙まほ』でもあった主題。不連続の自己を連続した自己として捉え、その意義を見つけるためにもう一度他者と関係するさまは、月社妃がこぼした…

『水葬銀貨のイストリア』を読む 前夜(感想・レビュー)

調べてみると「イストリア」とは、ギリシャ語のistoríaないしラテン語のhistoria(hは無音のh)のことのようで、フランス語のhistoireと同じように、これらの言葉には「物語」という意味がある。物語=歴史という観点から語られた物語(tale / story)が『水…

ノベルゲームの精神病理を読む

これまでプレイしてきたノベルゲームより、特に不連続な自己の問題に着眼した秀作を選定、紹介してみたい。読者の需要も影響してか、ノベルゲームでは自己の問題を深く堀りさげた物語が多く、自己と環境との軋轢が積極的に主題化されてきた。今回はサイトで…

恣意的アニメ概論 後夜

深刻な社会問題をアニメ化するなど不謹慎極まりない、と言う大人には、それでは若者が主体的に社会問題を考えたくなるような策を別に提示してみろ、と言っておく。語る価値のない作品もかなり多い表現領域だが、それなりに意義をもった、議論されるべき物語…

恣意的アニメ概論 前夜

昨年度に仕事で行った講義でアニメについてとりあげる機会があり、いくつかの窓を用意するような形で、連関しないトピックを並べて話をした。日本の文化的特徴を映したポストモダン的主題、として以下の話を総括することもできるが、私が恣意的に気になる話…

『半分の月がのぼる空』を読む(感想・レビュー) 続

文春文庫版には収録されていない、完結編とも言える挿話を収録した、電撃文庫版『半分の月がのぼる空 6』のレビュー。いろいろな局面で立ちどまっていたひとたちが、もう一度走りはじめるまでを追いかけた本巻も、相変わらずすばらしい仕上がりとなっている…

『花咲くいろは』を読む(感想・レビュー)

能登旅行記念に全話を通して見直してみたところ、やはりひと味ちがう面白さがあり、改めて感服した。仕事についての安い教訓を繰り言のように並べる作品がいまだ多いなかにあって、そういった押しつけがましい科白をいっさい挟むことなく、仕事の良し悪しを…

『生命のスペア』を読む(感想・レビュー)

“I was born for you”という副題については、恵璃の妹璃亜が姉のスペアであるということ、そして竜次が兄のスペアを強要された過去をもつこと、竜次と恵璃の死とひきかえに璃亜が第二の生を授かったことなど、いろいろと含みがあるようである。臓器移植の一…

『Crescendo』を読む(感想・レビュー)

もはや普通の小説である。アニメその他にある軽快で現実離れした会話のかけあいは一切ない。いまこういう筆致で書いているのはInnocent Greyのライターぐらいのものではないだろうか・・・・・・などと感慨にふけった。 血の繋がりがないとわかった途端に姉を犯す…

『猫物語』を読む(感想・レビュー)

以前とりあげた『花物語』に続いて今回は『猫物語』(つばさタイガー)をとりあげてみたい。化物語シリーズのくどさは折紙つきであり、さらにはシリーズをある程度追わなければこの物語にはたどりつかないわけだけれど、改めて見てみると、なるほどこれは面…

『SWANSONG』を読む 後夜(感想・レビュー)

柚香の言う、「ここでは何か望まないと、最低でも望むフリをしないと、まともに生きていけない」という言葉は、普通の社会生活にもそのまま当てはまるものであり、『CARNIVAL』が暴きだした過酷な真実でもあった。学と理沙の生き方は、ニーチェやキルケゴー…

『SWANSONG』を読む 前夜(感想・レビュー)

なんだ、ただの文学か。現在の出版事情ではこうした物語を表に出すのは難しく、まさにアダルト・ノベルゲームだからこそ、実現できた作品といってよいのではないだろうか。それにしてもすさまじい力をもった物語であった。 オウムの事件は“物語”という天災が…

『見上げてごらん、夜空の星を』を読む(感想・レビュー)

ふたご座流星群に合わせてプレイしはじめた本作。久々に穏やかな良作に浸った気がする。どう読むとかそういう問題じゃない普通の物語なので、あらすじなど追いかけながら、いつもとはちがった心持ちで紹介していきたい。沙夜isゴッド。 ●空白の三年間:沙夜√…

『最終試験くじら』を読む(感想・レビュー)

あまりにもひどいテキストなのになぜか擁護したくなる作品のひとつ。シナリオの大半は語るに値せず、十代の素人でもここまでひどいテキストは書かないだろうと言いたくなるレベルであり、私自身まともに読んだテキストよりスキップしながら斜め読みした量の…

2016年下半期レビューまとめ

2016年下半期に本サイトで掲載したアニメおよびノベルゲームのレビューをふり返る記事。各作品の所感を短くまとめて紹介していきます。漫画および文学作品ははずしているのでご注意。また、作品のなかには昨年より前に鑑賞したものもあるため、今年出逢った…