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ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

『半分の月がのぼる空』を読む(感想・レビュー) 続

文春文庫版には収録されていない、完結編とも言える挿話を収録した、電撃文庫版『半分の月がのぼる空 6』のレビュー。いろいろな局面で立ちどまっていたひとたちが、もう一度走りはじめるまでを追いかけた本巻も、相変わらずすばらしい仕上がりとなっている…

『眠れる美女』を読む

川端康成は日本ではじめてノーベル文学賞を受賞した作家であった。そのこと自体は誰でも知っているだろうが、こんなに気持ちの悪いことばかり書く作家が、日本の文学を象徴すると国外で認められた事実に自覚的であるひとは少ないのではないだろうか。私はと…

ヴィスワヴァ・シンボルスカを読む

私が大学生のころに夢中で観た映画はクシシュトフ・キェシロフスキ(Krzysztof Kieślowski)の作品群である。面白いことに彼の代表作「トリコロール三部作」のうち『赤の愛』はシンボルスカの詩に影響を受けたものなのだという。そんな偶然も手伝って、おり…

『日本近代文学の起源』を読む

本作を読んでの一番の収穫は国木田独歩の描写にふれることができた経験であった。独歩の描写をひきながら展開する「風景の発見」も然り、「内面の発見」、「告白の制度」と、どれもかなり力のある論考だったという所感。一年ぶりに読み返してみて、以前より…

『PSYCHE』を読む(感想・レビュー)

こんなに広いのに、その隅々までほんの少しの狂いもなく完全に行き届いているって、そんなこと、本当にあるんだろうか? もしそれが本当だとしたら、僕も完全に行き届いているのだろうか? 心も体も、それをつくる何もかもが正確に動作しているのだろうか?…

『象が踏んでも』を読む(感想・レビュー)

堀江先生の姿は何度もお見かけてしており、こちらが一方的に身近だと感じている作家でもある。私の先生の友人である日本文学の先生も、いま日本で一番いい小説を書くのは堀江だ、と酒の席で言っていた。確かに堀江先生の受賞歴はすさまじい。本当に日本人っ…

英文学おすすめ再掲

文学の過去記事紹介シリーズ最後は英文学。専門なのでやや多めの7人についての記事を再掲。 ●メアリー・シェリー sengchang.hatenadiary.com英文学の小説で一冊選べと言われたら迷わずこれを選ぶ。まさに現代の人間が読むべき珠玉の名作。1818年に書かれたに…

世界文学おすすめ再掲(仏・独・その他)

文学についての過去記事を紹介するシリーズ。今回は英文学を除いた海外文学より選定。いまの自分を形作ったのはこのあたりの文学。 ●インガー・クリステンセン sengchang.hatenadiary.comノーベル文学賞を受賞したデンマークの詩人。現在彼女の著作で日本語…

日本文学おすすめ再掲

過去記事のうちから、三年経ってもいまだ重要だと思う作家の記事を厳選。いま読まれてもそこまで恥ずかしくない記事だろう。たぶん。今回は現代日本文学篇。 ●柳美里 sengchang.hatenadiary.comよく炎上する面白い作家。私小説に近い作品を発表しつづける、…

『CARNIVAL』(小説版)を読む(感想・レビュー)

まずは作者のあとがきを引用してみたい。小学生の頃に飼育員をしていたという作者が、親鶏の産んだ卵をその眼前で傷つけてみたという話。 ・・・・・・ニワトリはすごい勢いで、卵を食べはじめたんです。殻をばりばりと砕いて、むさぼってるんですね。赤い血の膜が…

『半分の月がのぼる空』を読む (感想・レビュー)

私は不治の病ものに弱いので「くるぞ、くるぞ・・・・・・ほらきたー」みたいな展開できちんと泣ける訓練された読者である。不治の病ものは大きな主題が明確に決まっているので、その単純明快な主題をどれほど奥深いものにできるかは作家の器量にかかっており、二…

博士後期課程まで行った文学好きが勧める本の読み方 後夜

前夜から微妙にタイトルが変わっていますがそこはご愛嬌。読む本の探し方なんてものは本当はなく、手にとって読みたいと思ったら、それはもう読む本を見つけたということ。そのくり返しが習慣化したあたりで読むのがこの記事。誰もおまえに頼んでねえと言わ…

博士後期課程まで行った文学好きが勧める本の選び方 前夜(初級編)

記事の更新を意気込んではじめたはいいものの、日本語と英語で作品の読みを展開するだけでは身がもたないことを早くも痛感し、雑文も書くことを決定。更新頻度をあげる狙いもあるが、英語に“翻訳”することの手間とつまらなさに気づいてしまった。もともと翻…

エリザベス・ボウエン「幻のコー」

イギリス女性作家のこの感じを何と言ったらよいのか・・・・・・とにかく硬い。真面目と言うのなら日本やドイツの方がよっぽどという感じがするけれど、イギリス女性作家の色気のない文体は読んでいてなかなか手強いものである。ノーベル文学賞をとったドリス・レ…

Denis Robert / Happiness

I wonder how sex has been dealt with in contemporary French novels. When it comes to love, we say France. Sagan, Collette, and Bataille described so much attractive characters, but if they are here, it must be terribly uncomfortable to be …

デニス・ロベール『幸福』

フランスの現代小説で性がどのように扱われうるだろうと考えていた。恋愛と言えばフランスである。サガンも、コレットも、はたまたバタイユも、とても心惹かれる人物を書いたが、しかしもしそうした作中人物たちが傍にいたら不愉快な気持ちになること請け合…

Yasuo Tanaka / Obscurely, but Crystal

It is said, when this novel was published, it strongly attracted attention. In spite of its unpopularity now, it is still sometimes mentioned as one of postmodern novels in books referring to contemporary literary history in Japan. It’s ea…

田中康夫『なんとなく、クリスタル』

この小説が出た当初はとても注目が集まったようで、今は知っているひとも少なくなってしまったが、現代の文学史について触れた本ではよく見かける一冊でもある。本作はポストモダン小説の興味深い一例として紹介されることが多い。この小説の試みが非常に斬…

Charlotte Bronte / Jane Eyre

This is Charlotte’s major work, needless to mention, adapted for the film in French a year ago (how many times?), which drew attention on the novel itself. Without exception, it is hard to choose a virtue of classical masterpieces to intro…

シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』

一昨年にフランスで映画化されたことでふたたび脚光を浴びたが(何度目の映画化だろう?)、言わずと知られたシャーロットの代表作である。本作に限らず、古典的名作の美点を取捨選択して紹介するのはとてもむつかしいのだけれど、自分の文学のテーマでもあ…

Haruki Murakami / Norwegian Wood

This novel is more unforgettable than all kinds of other books I ever read. I’m not an ardent fan of Haruki Murakami now, but I still read it once a year as my habit. When I’m about twenty-year-old, it radically changed my thoughts and fee…

村上春樹『ノルウェイの森』

これまで数え切れないほどたくさんの本を読んできたけれど、これほど特別な本は他にない。私はもう村上春樹の熱心な読者ではなくなってしまったが、この一冊だけは、一年に一度は必ず読み返している。十九歳から二十歳になる数日前に読んだ、自分の考え方や…

Masayo Koike / Selected Poems

Since this is the celebrated hundredth article and the fiftieth book, I happened to find a impressive book at the bottom of my shelf while thinking who I should choose for this time. It might be seven years ago that I heard her lecture. At…

小池昌代『小池昌代詩集』

記念すべき百回、五十冊目の紹介ということもあり、ここに来て誰を選ぼうかと悩んだのだけれど、本棚の奥の方からとても懐かしい詩集が一冊、見つかった。講演会を聴きに行ったのは七年ほど前のことだろうか。その時は四元康祐との共著『詩と生活』について…

Christina Rossetti / Selected Poems

I was really surprised at finding that a poem of Christina Rossetti was printed on the English textbook in Japanese junior high school. Our time is Emily Dickinson, an American poet. Why Rossetti’s poem was used might be due to the fact th…

クリスティーナ・ロセッティ 『クリスティーナ・ロセッティ詩集』

仕事先の塾で覗いた中学の英語の教科書にクリスティーナ・ロセッティの詩が載っていた時には驚いた。私たちの時にはアメリカの詩人エミリー・ディキンソンが載っていたけれど、まさかロセッティが載っているとは。その理由には、彼女が子供向けの詩を多く書…

Arthur Rimbaud / Selected Poems

Around ten years ago — from nineteen to twenty, I’d been really into reading French poetry. Baudelaire, Verlaine, Jacques Prévert, Paul Éluard, and Apollinaire...Rimbaud was one of them I chose. My friend at that time likes a translation b…

アルチュール・ランボー『ランボー詩集』

今から十年ほど前、一九歳から二十歳くらいにかけて、フランスの詩を浴びるように読んだ。ボードレール、ヴェルレーヌ、ジャック・プレヴェールにエリュアール、アポリネール・・・・・・その中には当然ランボーも入っている。その頃仲の良かった友人が小林…

Sidonie-Gabrielle Colette / Ripening Seed

I encountered Colette about ten years ago. When in 18 or 19 — a term of being neither adult nor child — I read Ripening Seed, very impressive novel. Through the intercourse, “almost adult but childish”, developed in the novel, I notice it …

シドニー=ガブリエル・コレット『青い麦』

コレットとの出逢いはおよそ十年前にまで溯る。高校三年か大学一年か、それくらいの“大人と子供の中間”くらいの時期に読んだ思い出深い小説がこの『青い麦』である。小説の中で展開される“almost adult, but childish”な遣りとりを読んでいると、やはりこう…

William Blake / Songs of Innocence and Experience

‘Drop thy pipe, thy happy pipe; Sing thy songs of happy chear.’ So I sung the same again, While he wept with joy to hear.‘Piper, sit thee down and write In a book that all may read.’ So he vanish’d from my sight And I pluck’d a hollow reed…

ウィリアム・ブレイク『無垢と経験の唄』

あなたの楽しい笛を捨て 楽しい唄を歌ってよ。 そうして私はまた歌う その子は聴いて、涙に暮れた。 笛吹きさん、座ってそれを みんなが読める本に書いてよ― そしてその子は消えてしまった。 私は虚しい芦を一本摑みとる。 それでひなびた筆をこしらえ、 綺…

Thomas Hardy / Tess of the D'Urbervilles

As to modern tragedy, I always count Tess of the D’Urbervilles as a good example. Very different from classical tragedy in which a irresistible influence conquers human fates, modern tragedy is that evil of a human controls others. I’m not…

トマス・ハーディー『テス』

現代的な悲劇ということについて考える時この『テス』を一番最初に思いだすのだけれど、人間の力が及ばない巨大な影響力に運命を左右される古典的悲劇とは一線を画し、人間の〝悪〟がひとりの人間の運命を左右するというのが、現代的悲劇の特徴であると言え…

Johann Wolfgang von Goethe / The Sorrows of Young Werther

This is the masterpiece of the eighteenth century Romantic literature Goethe wrote when he was twenty five years old. He was likely to love it much and proud that it was largely accepted as a whole. Many were fascinated by Werther’s figure…

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ 『若きウェルテルの悩み』

二十五歳のゲーテが書いた十八世紀ロマン派文学の最高傑作である。ゲーテはこの作品を深く愛していたようで、概して世の中に広く受け容れられたことを誇りに思っていたのだという。多くの人々がウェルテルに心酔し、ロッテが文学における理想の女性像となっ…

Sir Thomas Malory “Tristram and Isoud”

Malory’s version is not original. Sir Tristram de Lione, one of the episodes of which a medieval chivalry literary piece, La Morte D’Arthur consist, becomes the most famous because of its adaptations as Opera, for instance. Each episode is…

サー・トマス・マロリー版「トリスタンとイゾルデ」

「マロリー版」と断ったのはもちろん、マロリーの書いたものがオリジナルではないからである。「トリスタンとイゾルデ」はイギリス中世騎士道文学の傑作『アーサー王の死』の一部を成す物語であるが、いまやオペラなどで最も有名な挿話のひとつとなっている…

Alfred Tennyson / Enoch Arden

1850 has been regarded as the important year in English literature since Tennyson’s In Memoriam was published. After the death of Arthur Hallam who was Tennyson’s best friend and going to marry his sister, he had been writing In Memoriam f…

アルフレッド・テニスン『イノック・アーデン』

一八五〇年がイギリス文学において重要な年とされているのは、テニスンの『イン・メモリアム』が出版された年だからである。彼の妹と結婚するはずだった親友ハラムの死後、一八年もの間書き続けて完成させた彼を悼む詩集『イン・メモリアム』が評価され、テ…

John Milton / Paradise Lost

In the era after Shakespeare, through the confusion of Puritan Revolution in Britain, a great poet John Milton lived. It is surprised that he was blind when writing Paradise Lost. It is based on Genesis, and he largely expanded it by means…

ジョン・ミルトン『失楽園』

シェイクスピアのすぐあとの時代に活躍し、ピューリタン革命の動乱期を生きたイギリスの偉大な詩人である。この『失楽園』執筆時に彼は盲目であったというのだから驚きだ。旧約聖書の『創世記』をモデルとし、ミルトンはそこに自身の想像的世界を埋め込みな…

William Wordsworth / The Collected Poems of William Wordsworth

In English literature, as to the motif of Imagination and nature, Wordsworth is the primary poet we must consider in the first place. He is the most famous Romantic poet and belongs to the first Romantic generation with Coleridge, a predec…

ウィリアム・ワーズワース『ワーズワース詩集』

イギリス文学において想像力や自然とくれば、まずはワーズワースの名前を挙げねばならない。彼はコウルリッジと同じく前期ロマン派に属する詩人であり、バイロンやシェリー、キーツといった後期ロマン派の詩人に先立つ最も著名な作家である。ここでは、モー…

Sylvia Plath / The Bell Jar

In terms of the literary history, Sylvia Plath was a contemporary poet coming into being around in 1969. Her husband is Ted Hughes, a laurel poet in England. And she was also informed enough to be given Fulbright Scholarship to study in Ca…

シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』

文学史的な側面から紹介すると、シルヴィア・プラスは詩人であり、一九六九年頃から活躍した現代の作家と言ってよい。夫はイギリスの桂冠詩人テッド・ヒューズである。また彼女はフルブライト奨学金を貰ってケンブリッジに留学するほどの博識でありながら、…

Emily Dickinson / The Complete Poems of Emily Dickinson

Those who are familiar with foreign literature must have heard that it’s impossible to grab the significance through translation. Not few doesn’t realise what it means. Sentences always have a subtle nuance (what should I put it?) only the…

エミリー・ディキンソン『ディキンソン詩集』

外国文学に親しみのあるひとなら、原文で読まないと良さが分からない、といった話を一度は耳にしたことがあるだろう。ぴんとこないひとも多いに違いない。文章にはそもそも、母語の話者でなければ感じることのできない微妙なニュアンス(としか言いようがな…

Françoise Sagan / A Certain Smile

When referring to my literary life, I always say I began with Françoise Sagan. Before reading Sagan, I had already been familiar with short stories of Sartre or works of Boris Vian (of course in high school we were made to read Souseki or …

フランソワーズ・サガン『ある微笑』

誰かに文学について話す時、私は「フランソワーズ・サガンから文学に入った」と言う。その前にもサルトルの短篇やボリス・ヴィアンなどを読んではいたのだが(もちろん高校では漱石や谷崎なども読まされていた)、自分から手に取った小説から“文学”を感じた…