ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

文学(Literature)-日本文学

夢野久作を読む

『ドグラ・マグラ』だけでなく、「瓶詰の地獄」や「死後の恋」もまた、自己の基盤が足元から崩れさるような物語であった。夢野久作はそれを“生来の運命”に紐づけて語り、多くの作品で家や出生の問題を中心に据える。『ドグラ・マグラ』の面白いところは、ほ…

『死体泥棒』を読む

小説として出版されている瀬戸口(唐辺)作品のうちで最もよい作品だと思う。彼の物語は総じて同じ主題を追求したものなのだと改めて感じる。個人的には、小手先だけでいろんな主題を書き分ける作家が大嫌いなので、血を流しながら同じ主題を何度も何度も書…

『半分の月がのぼる空』を読む(感想・レビュー) 続

文春文庫版には収録されていない、完結編とも言える挿話を収録した、電撃文庫版『半分の月がのぼる空 6』のレビュー。いろいろな局面で立ちどまっていたひとたちが、もう一度走りはじめるまでを追いかけた本巻も、相変わらずすばらしい仕上がりとなっている…

『眠れる美女』を読む

川端康成は日本ではじめてノーベル文学賞を受賞した作家であった。そのこと自体は誰でも知っているだろうが、こんなに気持ちの悪いことばかり書く作家が、日本の文学を象徴すると国外で認められた事実に自覚的であるひとは少ないのではないだろうか。私はと…

『日本近代文学の起源』を読む

本作を読んでの一番の収穫は国木田独歩の描写にふれることができた経験であった。独歩の描写をひきながら展開する「風景の発見」も然り、「内面の発見」、「告白の制度」と、どれもかなり力のある論考だったという所感。一年ぶりに読み返してみて、以前より…

『PSYCHE』を読む(感想・レビュー)

こんなに広いのに、その隅々までほんの少しの狂いもなく完全に行き届いているって、そんなこと、本当にあるんだろうか? もしそれが本当だとしたら、僕も完全に行き届いているのだろうか? 心も体も、それをつくる何もかもが正確に動作しているのだろうか?…

『象が踏んでも』を読む(感想・レビュー)

堀江先生の姿は何度もお見かけてしており、こちらが一方的に身近だと感じている作家でもある。私の先生の友人である日本文学の先生も、いま日本で一番いい小説を書くのは堀江だ、と酒の席で言っていた。確かに堀江先生の受賞歴はすさまじい。本当に日本人っ…

日本文学おすすめ再掲

過去記事のうちから、三年経ってもいまだ重要だと思う作家の記事を厳選。いま読まれてもそこまで恥ずかしくない記事だろう。たぶん。今回は現代日本文学篇。 ●柳美里 sengchang.hatenadiary.comよく炎上する面白い作家。私小説に近い作品を発表しつづける、…

『CARNIVAL』(小説版)を読む(感想・レビュー)

まずは作者のあとがきを引用してみたい。小学生の頃に飼育員をしていたという作者が、親鶏の産んだ卵をその眼前で傷つけてみたという話。 ・・・・・・ニワトリはすごい勢いで、卵を食べはじめたんです。殻をばりばりと砕いて、むさぼってるんですね。赤い血の膜が…

『半分の月がのぼる空』を読む (感想・レビュー)

私は不治の病ものに弱いので「くるぞ、くるぞ・・・・・・ほらきたー」みたいな展開できちんと泣ける訓練された読者である。不治の病ものは大きな主題が明確に決まっているので、その単純明快な主題をどれほど奥深いものにできるかは作家の器量にかかっており、二…

Yasuo Tanaka / Obscurely, but Crystal

It is said, when this novel was published, it strongly attracted attention. In spite of its unpopularity now, it is still sometimes mentioned as one of postmodern novels in books referring to contemporary literary history in Japan. It’s ea…

田中康夫『なんとなく、クリスタル』

この小説が出た当初はとても注目が集まったようで、今は知っているひとも少なくなってしまったが、現代の文学史について触れた本ではよく見かける一冊でもある。本作はポストモダン小説の興味深い一例として紹介されることが多い。この小説の試みが非常に斬…

Haruki Murakami / Norwegian Wood

This novel is more unforgettable than all kinds of other books I ever read. I’m not an ardent fan of Haruki Murakami now, but I still read it once a year as my habit. When I’m about twenty-year-old, it radically changed my thoughts and fee…

村上春樹『ノルウェイの森』

これまで数え切れないほどたくさんの本を読んできたけれど、これほど特別な本は他にない。私はもう村上春樹の熱心な読者ではなくなってしまったが、この一冊だけは、一年に一度は必ず読み返している。十九歳から二十歳になる数日前に読んだ、自分の考え方や…

Masayo Koike / Selected Poems

Since this is the celebrated hundredth article and the fiftieth book, I happened to find a impressive book at the bottom of my shelf while thinking who I should choose for this time. It might be seven years ago that I heard her lecture. At…

小池昌代『小池昌代詩集』

記念すべき百回、五十冊目の紹介ということもあり、ここに来て誰を選ぼうかと悩んだのだけれど、本棚の奥の方からとても懐かしい詩集が一冊、見つかった。講演会を聴きに行ったのは七年ほど前のことだろうか。その時は四元康祐との共著『詩と生活』について…

Motojirou Kajii “Lemon”

We cannot help thinking of what this lemon is. I forgot what was taught as to it in my high school class many years ago...I remember nothing. But at any rate, how should we think of such this tale?I have read “Lemon” several times, and at …

梶井基次郎「檸檬」

どうしてもこの “檸檬”が何なのかを考えてしまうわけだが、はて高校の時分にどのように教わっただろうか・・・・・・と思いだそうとして見るが、果たして何も憶えていない。いったい私たちはこんな変なお話を前に何を考えるべきなのだろうか。「檸檬」を読み…

Sakutarou Hagiwara “A Blue Cat”

I took him since it is said that Tatsuo Hori liked to read him, but I was so surprised he is my kind of thing. His poems with the shadow of death is filled with nature, and the description as an objective correlative is found everywhere. B…

萩原朔太郎『青猫』

堀辰雄が愛読していたというので手にとってみたのだが、よもやこんなにも相性のいい詩人だとは思わなかったので驚いた。何処か死の影がちらつく詩篇には自然が溢れ、客観的相関物とも言える描写がところどころに見てとれる。しかし、そう決めてかかるにはと…

Mimei Ogawa “Red Candles and the Mermaid”

Mimei Ogawa is one of the persons who built a solid foundation for juvenile literature and were awarded, after the war, for his cultural contribution. Children’s stories in Japan are prominent as Nankichi Niimi’s “Buying Gloves” and “Gon, …

小川未明「赤い蝋燭と人魚」

小川未明と言えば、日本の児童文学にひとつの大きな流れを作りだした賢人であり、戦後には文化功労者にも選出されている。「手袋を買いに」や「ごんぎつね」の新美南吉、「泣いた赤鬼」の浜田廣介など、児童文学と言っていいのかわからない、対象年齢を問わ…

Michizou Tachihara / Selected Poems

During being in Tokyo university he won the prize of architecture three times, while winning the prize of Nakahara Chuya, which certifies his versatile talent. He, who died young at the age of twenty-five, can be recognised as a legend.As …

立原道造『立原道造詩集』

東大在学中から三年連続で建築の賞を受賞し、詩では中原中也賞を受賞するなど、才能豊かなひとであったようだ。わずか二十四歳という若さで亡くなっている、伝説と言ってもいい詩人であろう。堀辰雄らと親交があり、彼と同様、長野県の軽井沢に親しみをもっ…

Shuntarou Tanikawa Sixty-two Sonnets

It might be impossible to understand each phrase in a poem. Actually it is better to understand what we could understand, not a whole, in the way we want since a poems is a sort of word play to enjoy a sense of each word.Shuntarou Tanikawa…

Tatsuo Hori “The Wind Is Rising”

I, who love nature of Nagano, will never find anyone really meeting with me, but him. I was impressed when reading his realistic description of natural landscape, since then, it has been my habit to carry his books with me while travelling…

堀辰雄「風立ちぬ」

長野の自然が大好きな自分にとって、これほど肌の合う作家はこの先おそらく一生見つからないのではないだろうか。自然の写実的描写に心うたれ、それ以来というもの、旅行には欠かさずもち歩く一冊である。「風立ちぬ」は堀辰雄の許嫁がサナトリウムへ入院し…

Yoko Tawada “Gotthard Train”

It might be obvious that Yoko Tawada is a prominent writer if you’ve already known her so many careers. But in my case, I did understand her attraction in a truly sense when thinking of how we should read her works. At any rate, let alone …

多和田葉子 「ゴットハルト鉄道」

多和田葉子がすごい作家だというのは経歴を見ても一目瞭然だが、彼女の作品をいったいどのように読もうか?と考えた時、ようやく彼女の本当の魅力が理解できたような気がする。これはあくまで個人的な体験だけれども。いずれにせよ、国内での評価も然ること…

Natsuo Ginniro / Like A Clear Night Sky

An author writes many books, but I have only two of them but very good they are. When I wrote about her before, I received a response “I love, too.”, which connotes her latent popularity. Her poems are like Kaori Ekuni’s or, I dare say, li…