ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

片山令子『夏のかんむり』


spoon.という女の子向けの雑誌でこの詩集に触れていたのは、確かmotherというブランドのデザイナーであるeriさんだった気がするのだけれど、とにかくそのような経緯で知って手に入れた一冊である。他に『ブリキの音符』という絵本ももっている。こちらもまた、片山さんらしい素敵な言葉で飾られた本だ。

英文学やフランス文学の詩に親しみはあっても、日本語の詩はどうも苦手だった。しかし片山さんの「ミルキイウェイ」を読むと、ああこういうのが日本語で表現できる独特の情緒なのか、と感じる。簡潔な表現の奥から煙のように染みてくる、深いふかい味わい。心にじわりと滲み拡がってゆく心地がする綺麗な言葉を彼女は選ぶ。


 真夜中に何もなくて
 牛乳と玉子を見つけると
 甘くして混ぜて火にかける
 「わたしもそう」
 といって笑っていたひと。

 崖からまっさかさまというやり方は
 わすれられそうにもないけれど
 思い出すのはいつも
 この甘い
 雲のようなたべもののこと。


難解で入り組んだところは何処にもなく、まっすぐこちらへ伝わってくる言葉。これもひとつの詩の形だろうと思う。いわゆる西洋の作詩法というものが適応しえない日本語の詩は、韻や歩格といった技巧に依ることはあまりない。だからなのか、詩的な言葉表現とは言えども、私たちが普段使う言葉に限りなく近いものとなっている。

片山さんは決して著名な方ではないが、世の中にはまだまだ埋もれている名作がたくさんあるのだと思わせる一冊である。そういうものをひっぱりだして紹介するのも、自分の仕事のひとつだろうと思っている。