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ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

『罪ノ光ランデヴー』椿風香ルートを読む(感想・レビュー)

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 minoriレギュラーのゆいにゃん無双、椿ルートを講評。山を越えたあとにもうひと山、そしてもうひと山、となかなか楽しませてもらえました。あの『夏空のペルセウス』恋ルートをもう少し掘り下げたような印象。本作ではきちんと大人が登場することと、周囲の人間が優人をひき止めたり背中を押したりするところが描かれており、とてもよかった。風香の人物造形が甘いのでは、という見解も散見したが、幸せについての彼女の考えは『CARNIVAL』にも通ずるものがあり、大局的に見ればそれなりに心うたれる物語だった。

 

●がらくたの幸せ

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罪を主題にした物語なので、個々のヒロインが後ろめたい過去をもっているのだが、風香の罪は弟である主人公を捨て――母親に連れられて――村を出たこと。弟の様子を見に村へ戻ってきた彼女は姉であることを隠して主人公と同居をはじめる。そして噓に噓を重ねたあげく弟であることを知りながら彼と性的関係をもってしまう。これが第二の罪。恋に落ちた姉弟の葛藤は“どうすべきか”と“どうしたいか”の緊張関係に根をはる。

渦中の恋人がころころ考えを変えるのは当然のこととして(笑)、その一方で風香は、幸せに対する変わらない主張を優人に提示してみせる。「自分で手に入れる幸せこそが、本物の幸せ」であり、自然と手に入る幸せは、正しいかもしれないけれど、意味がないのだと捉える。なにかを捨てなければ幸せは手に入らない、しかし捨てていいものといけないものがあり、それを決める覚悟の物語が椿ルートであった。

『ペルセ』で強調されていた“世界を敵にまわしても君を護る”よりも、本作では“君を護るためには失ってしまうものもある”のほうに立脚しており、そこに好感を抱いた。セカイ系の型を利用して現実的な視点を盛りこんだよいシナリオだったと思う。あまりそうは思われていないみたいだけれども。

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●付記

幸せはがらくただ、と言ったのは『CARNIVAL』の木村学だが、がらくたでない幸せがちゃんと用意されているのは、まあ物語としては普通だろう。現実はそううまくはいかないぞ、と言いはじめれば切りがないので、こういう物語はあっていいと思うし、フィクションの粗と絶望的現実を暴きだす『CARNIVAL』のような物語も一方では必要だろう。ただminoriは一度『ef』をつくっているので、優子ルートのような、あの救いがたい物語をもう一度書いてほしいとも思ってしまう。

⇒『罪ノ光ランデヴー』真澄あいルートを読む(感想・レビュー) - ワザリング・ハイツ -annex-

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