ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

2016年上半期レビューまとめ(アニメ・ノベルゲーム)

2016年上半期に本サイトで掲載したアニメおよびノベルゲームのレビューをふり返る記事となります。短くまとめた所感からなんとなく各々の作品に興味をもってもらえればうれしいです。個人的なノートとしての役割のほうが大きいですが。

●『CLANNAD

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導入、“Theory of Everything”、並行世界、ポストモダン的なまとめと四つの記事を記載した。交わるはずのない並行世界どうしで想いの橋渡しが実現し、日常を奇蹟として捉えなおす物語が『CLANNAD』である。日常・家族の主題を多角的に扱いながらも、ルートごとの個別の主題もまったく疎かにしないという、恐ろしい作品でもある。並行世界の捉え方は、このあとに紹介する『何処へ行くの、あの日』や『涼宮ハルヒの消失』、『CROSS†CHANNEL』などにも適応できるものだった。まだ別の主題でも書けそうなのでそのうち書くかもしれない。

『クラナド』を読む(Reading CLANNAD)

 

●『12の月のイヴ』みずかルート

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元の人格が新しい人格に呑みこまれてしまうところがこのルートの要。自分の好きになったみずかの人格が消えるのを、どの人格もみずかだから、と受けいれる主人公の姿勢は、安易な人格統合を避ける思い切った結論に物語を導く。話そのもので言えばむしろ杏鈴ルートのほうが好みではあった。

 『12の月のイヴ』を読む(感想・レビュー)

 

●『ソレヨリノ前奏詩』はるかルート

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ヒロインが全員面倒くさいのに匙投げなかった主人公が一番偉い。本当の自己を隠して生きてこなければならなかった超人はるかを、かわいそうな視点だけで捉えるのではなく、彼女のもつ傲慢さを主人公が的確に突くことで、ふたりそれぞれの傷が癒やされてゆく展開に思わず舌を巻いた。短い話ながらもすぐれた洞察に満ちた対話が印象的。

『ソレヨリノ前奏詩』都築はるかを読む(感想・レビュー)

 

●『ソードアート・オンライン

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身体性を否定するゲーム内の仮想世界で現実よりも強く身体性を感じる物語。仮想現実に関する問題提起という意味では最も成功した作品のひとつではないかと思う。心身二元論とその否定をないまぜにすることで、仮想現実がひと筋縄では説明できない複雑な問題を孕んでいることを示してみせた良作。

『ソードアート・オンライン』を読む(感想・レビュー)

 

●『ぼくのたいせつなもの

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知るひとぞ知る隠れた名作。短い作品ながらも、臓器移植にまつわる生命倫理から、人工知能の問題、不治の病、他者の自有化など、道徳や医療に寄った論題を様々に提示する万華鏡のような物語。ダウンロード版がお手軽に手に入るのでぜひプレイしてみてほしい。

『ぼくのたいせつなもの』を読む(感想・レビュー)

 

●『何処へ行くの、あの日

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無数の可能性の世界を生きながらも、最後まで自分の望む世界を見つけることのできない、絵麻の悲しい物語。世界を改変できる絵麻が、逆に世界やその住人から影響を受けるという閉塞的循環は、精神病理学的な主題とも言える。マルチエンディングを否定した皮肉な構成も注目に値するだろう。

『何処へ行くの、あの日』を読む(感想・レビュー)

 

●『CARNIVAL』

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世の正しさと相いれなかった人間が、ゆがんだ正しさによって崩壊した自己を築きなおす物語。過酷な現実を過酷なまま突きだし最後まで描き切った瀬戸口氏は大したもの。世間にはびこる無用の正しさが息苦しい現実の元凶であることを再確認させてくれます。小説版の記事は近々公開予定。

『CARNIVAL』を読む(感想・レビュー)

 

●『涼宮ハルヒの消失

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物語のAtoZが学べるのは『CLANNAD』とこのハルヒシリーズ。私の記事ではポスト構造主義的な読みにひと言コメントしただけで終わってしまったものの、本作はシリーズの抽象を再出しながらも、非現実を現実として生きる決意の物語に仕上げ、非常に傑出したものとなった。バグを心と見做すキョンの捉え方は切ないほど当を得たものであると言える。

『涼宮ハルヒの消失』を読む(感想・レビュー)

 

●『罪ノ光ランデヴー』椿風香ルート

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自然と手に入る幸福をがらくたなのだと否定する、『CARNIVAL』を想起させる風香の幸福観にはとても共振した。“世界を敵にまわしても君を護る”よりも、“君を護るためには失ってしまうものもある”に立脚し、幸福を手にするために自ら足を踏みだすふたりの姿がとても印象的だった。あいルートないし全体の総括としてもう一本記事を書く予定。

『罪ノ光ランデヴー』椿風香ルートを読む(感想・レビュー)

 

●『半分の月がのぼる空

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ノベルゲームで不治の病と言えば『ナルキッソス』が最高峰だが、こちらも負けてはいない。心臓病の妻を亡くした夏目が、同じく心臓病の里香とその恋人裕一に自分たちのありえた未来を重ねて見守る姿は、この作品を卓抜なものとした重要な要素であろう。語らない少年から誰かのために語る青年へと成長する裕一の潔さも必見である。

『半分の月がのぼる空』を読む (感想・レビュー)

 

●『ef – a tale of memories』

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13時間しか記憶を保持できないがゆえに物語をもてない少女の話。自分の過去を記録としてしか認識できない彼女が、少年との出逢いを通じて、恣意的に思いだす記憶ではなく、自然とよみがえってしまう思い出を手に入れてゆく。個人的には千尋のつくる物語がユール・シュペルヴィエルの「海に住む少女」と似ていて興味深かった。後夜と題してもうひと記事書くつもりでいる。

『ef – a tale of memories』を読む/前夜(感想・レビュー)

 

●『CROSS†CHANNEL

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生きるためにゆがみを身につけた少年少女たちの話。ひととちがうからこそ他者と関係しなければならないと言う黒須太一は、しかし誰もいない世界でひとり生きることを選択し、元の世界へ友人たちを送り返すためにひとりひとりと関係する。この一見矛盾した行為の奥に、脈々と息づく生への意志を不思議と感じとることができたのは、きっと私だけではないだろう。

『CROSS†CHANNEL』を読む(感想・レビュー)

 

●『エルフェンリート

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メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』と主題を分かつ岡本倫の代表作。先出の『ぼくのたいせつなもの』にも描かれた、人間の倫理や道徳観をなんのためらいもなく人間でないものに押しつける矛盾を、これでもかというほど徹底的に追及した稀有な作品のひとつ。また、分裂した自己が最後まで統合されない、むしろtrue selfが最後まで他者に受けいれられないという、あまり例を見ない主題も眼をみはるものがあった。

『エルフェンリート』を読む(感想・レビュー)

 

常にリアルタイムで記事を書いているわけではないため、昔鑑賞したものを記事としてまとめることも多いのだけれど、それにしても同時期の作品の少ないこと少ないこと。今後の公開記事としては『CARNIVAL』(小説版)、『なついろレシピ』、『明日の君と逢うために』、『Crescendo』などを予定。青山景の漫画『ストロボライト』や西尾維新の『花物語』、あるいは言語哲学精神病理学の記事も掲載すると思います。

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