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ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

英文学おすすめ再掲

文学の過去記事紹介シリーズ最後は英文学。専門なのでやや多めの7人についての記事を再掲。

 

●メアリー・シェリー

sengchang.hatenadiary.com英文学の小説で一冊選べと言われたら迷わずこれを選ぶ。まさに現代の人間が読むべき珠玉の名作。1818年に書かれたにもかかわらず、人体創造や生命倫理、勧善懲悪の否定に関係の主題といった現代的な問題を扱うとともに、当時のヨーロッパの歴史、政治、宗教的背景を織りこみ、それをロマン派的想像力で広く展開したおそろしい作品。現代においても読む意義のある数少ない古典文学の一冊であると言える。

 

ウィリアム・ブレイク

sengchang.hatenadiary.comイギリス文学の詩人は時に“a visionary poet”と呼ばれることがあり、神秘家や預言者と見做されることもあるほどだが、20世紀以降に興隆するSFやマジックリアリズムを括った幻想文学の原風景もここにあるような気がする。視覚化を否定する幻想的な描写は、文学以外の媒体では決して表現できないイメージを立ちあがらせるとともに、文学的という言葉の意味をもう一度思いださせてくれる。ブレイクの代表作である“Songs of Innocence”と“Songs of Experience”だけでも読む価値はあるだろう。

 

アンナ・カヴァン

sengchang.hatenadiary.com精神病理を主題にとったイギリスの作家と言えば彼女が最も重要なのではないか。毎日決まった時間にヘロインをうち続け、「麻薬と共存している」とまで医者に言わせた面白い作家。精神病院の物語である『アサイラム・ピース』をはじめ、分裂した自己を中心に、単調な毎日のなかで静かに崩壊してゆく“私”を描きつづけた作家である。カフカの影響を強く受けていると言われ、マジックリアリズムを感じさせる、不条理でしかし精緻なすばらしい描写に満ちた作品を数多く残した。イギリス滞在時、かなり病んでいたときに買いあさったのもいまはいい思い出。

 

●エミリー・ディキンソン

sengchang.hatenadiary.com誰がなんと言おうとアメリカ最大の詩人はエミリー・ディキンソンである。読むたびに新しい発見がある作家であり、いわゆる「原文を読まなければわからない」という、言語レベルでの技巧を凝らした作品も多い詩人である。上の記事では具体的にひとつ例をとりあげておいた。難解な作品が多いものの、岩波の翻訳版は一般向けによいものを選定しており、また原文との対訳になっているのでおすすめできる一冊である。

 

シルヴィア・プラス

sengchang.hatenadiary.comオーブンに頭を突っ込んで自殺した美しい文学少女。どちらかと言えば詩人であるが、彼女が唯一残した小説『ベル・ジャー』は、女性版『ライ麦畑でつかまえて』として著名であり、いまでも親しまれている。卒業論文ドストエフスキーの二重人格を主題にしたこともあり、true selfとfalse selfに分裂した自己の主題がいたるところに見られるのも大きな特徴のひとつである。自己の内面を深く見つめた切実な詩作品を多く残した。大学の卒業論文でとりあげた個人的にとても思い出深い作家でもある。

 

アルフレッド・テニスン

sengchang.hatenadiary.comおそろしく男前で、しかし女性に頓着しない、不思議な秀才であったらしい。親友を失った悲しみを十数年かけて書き綴った大作『イン・メモリアム』 は、ヴィクトリア女王も愛したイギリス文学の傑作のひとつ。記事でとりあげた『イノック・アーデン』もまた、悲恋の三角関係を描いた現代に語り継がれるべき名作である。イギリスの作家はこうした見事な小話を本当に多く残している。数年前に、私の先生の訳した原稿をプロの役者が朗読した朗読劇を聴き、改めて深く感動した経験はいまだに忘れられない。

 

エミリー・ブロンテ

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19世紀イギリス文学を代表する奇人のひとり。彼女もまた小説は本作しか残しておらず、もともと詩を書き続けていた無名の田舎娘であった。十年詩を書き続け、小説を発表した翌年に病気で亡くなってしまった。『嵐が丘』自体はあまりにも有名で、日本でも映画や舞台の翻案は数知れず、高校生や大学生の演劇の定番でもある。しかしながら彼女の本質的魅力は詩篇のほうにあるため、英語が読める読者であれば、まずは彼女の詩に触れてもらいたい。私が専門に研究していた作家であり、いまでも精神的に最も深いところで付きあい続ける作家のひとりだと言える。

 

ここには入れられなかった、たとえばキャサリン・マンスフィールドウィリアム・ワーズワースなんかもおすすめしたい作家である。記事にしていない作家であれば、ポール・オースターエイミー・ベンダーエリザベス・ビショップあたりだろうか。紹介できなかった作家も含めて英文学の過去記事については下記のリンクからどうぞ。

⇒文学(Literature)-イギリス文学 カテゴリーの記事一覧 - ワザリング・ハイツ -annex-

⇒文学(Literature)-アメリカ文学 カテゴリーの記事一覧 - ワザリング・ハイツ -annex-