ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

『少女アクティビティ』を読む(感想・レビュー)

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アイキャッチがロシアンフォルマリズムのエル・リシツキーのデザインに似ている。まあそれはともかくとして。

『少女マイノリティ』がとてもよかったのになにも書けず悔しかったので『少女アクティビティ』も併せてプレイした。『マイノリティ』に比べて『アクティビティ』のほうは著しく評価が低いのだが、わりと感心してシナリオを読んでしまった私は、なにか重大な見落としでもしているのだろうか。体からはじまる関係というありきたりな物語ながらも、『マイノリティ』と同じく、そこにいたる動機がわりと切実であり、『天使のいない12月』のような自己存立の主題をうまくまとめあげていた。

 

●ゆがんだ価値による自己確立の主題:彩夏√

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ひとを好きになるということがわからなくなってしまった彩夏は、健流と体の関係をもつことで、その意味を問いなおそうとする。ここまではよくある話だが、ここに彩夏なりの自己保持の意志が重ねあわせて語られる。

彩夏と姉の美夏はふたりで同じ男を好きになり、やがて彼と付きあいはじめた美夏は、ある日その男の教え子たちに(彼の指示によって)まわされたあげく自殺してしまう。自分の好きになった男がこんな人間だったのかと彩夏は困惑し、なかば自暴自棄になって健流と体の関係を結ぶ。しかし自暴自棄でありながらも、健流を選んだのには理由があり、美夏を襲った男たちに復讐した健流の姿を見て、このひとならいいかな、と思ったとのちに彩夏は話す。

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健全な道を選んだ末に非道な答えを突きつけられ、否応なく道からはじきだされてしまった彩夏は、非常識をたどって今度は別の答えにたどりつこうとする。体の気持ちよさを優先し、健流への好意をあえておろそかにすることで、自分の気持ちにゆさぶりをかけて、彩夏は自分の心と改めて向きあおうとするのである。健全な価値のなかでゆきついた先があんな非道な人間への好意だったからこそ、彼女は別の価値を指標に、他者への好意のプロセスを変質させようとしたのであった。

体から関係がはじまり、やがて本気になる物語は掃いて捨てるほどあるものの、体の関係にいたる背景が緻密に描かれ、自己と他者の関係を別の角度から照射する本作はとても実直であった。まさに自己と他者の関係のために自己と他者がカンケイする物語であったと言える。ふたりでセックスばかりしていた日々になにか意味があったのか、と問う健流に、少なくとも健流がずっと自分のことを考えてくれているのがわかった、と彩夏がこぼしたのはなかなか胸に響くものがあった。

 

●付記

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体の関係をわりと容赦なく書けるのが、当たり前だけれど、この業界のよいところだと思う。あるいは極悪非道なふるまいについてもそうである。いま現在、文学的主題としてあえて眼を向けるのであれば性と暴力くらいしかない、というのは私の先生の言葉であるが、表現の制約が厳しくなっている以上、表業界で眼をみはる作品が出てくる未来はあまり望めない。『SWANSONG』や『さよならを教えて』のようなものは残念ながら表には出せないのである。心あたたかな作品ばかりではなく、心がゆがむような物語をめげずにつくってほしいと願ってやまない。

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