ワザリング・ハイツ -annex-

どんなに忙しい毎日でも、紅茶を飲んで、ほっとひと息。

村上春樹『ノルウェイの森』を読む

村上春樹の『ノルウェイの森』について書きました。

kandliterature.hateblo.jp

直子は心身が意図せず切りはなされてしまうのに困惑し、ワタナベは自ら意図して心身を切りはなした。ふたりはキズキを失い傷ついた似た者どうしに感じられるが、事実はまったく異なる、むしろ相容れない地獄を互いに抱えていたと言うべきだろう。そのふたりが恋人まがいのセックスをしたと考えると、ここまで意味のないセックスがあるだろうかと思ってしまう。『ノルウェイ』の切なさは、無為なものとわかっていながらそれを求めざるをえない、疎隔された心のむなしさにあるのではないか。この物語を支配するのは青春の“センチメンタリズム”などではなく、自己同一性をゆるがされた人々が絶望のふちに立ち、本当にあるのかもわからない自らの淵源を静かに見つめる“孤独”にほかならない。